スレイヤーズ(ゼロリナ)

□七つの海
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「お別れです、リナさん」

にっこりと微笑み残酷な言葉を紡ぎながら、リナと呼ばれた少女の身体を素手で貫いた。
何一つ表情を変えずに・・・。






***



あれから数百年が経った。
相変わらず魔王の復活も出来ていない。
その青年はふと思いついたように人間界に降り立った。


「あれから・・・もう何年なんでしょうね・・・」

愛しい人を手に掛けてからの彼は実に彼らしくない。
彼の上司はそれはそれで面白いとそのまま放置状態にしている。
魔道という非現実社会から科学という現実社会に移行としいているこの世界。
金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)の存在も今は人間にしてみれば関心が無い。
さらに言うならば魔族も龍族もエルフ族もすべて幻と化している。

「上司命令ですし、とっとと仕事を済ませましょう」

彼はその場を後にした。







***

「これ・・・ですね・・・」

久しぶりの仕事は「写本」の消去。
間違いなく「写本」だということを確認する。

「いつでも人は伝説に縋る、愚かな生き物です」
「誰?」

かたりと物音がするとそこには女性がいた。
彼はニッコリと笑う。

「夜分遅くに申し訳ありません。僕は謎の神官(プリースト)・ゼロスと申します」
「神官・・・様?」
「はい」

女は喚くことも嘆くこともしない。
するとクスッと女が笑った。

「貴男、いったい何歳なの?この科学が発展している時代に神官だなんて・・・」

ゼロスは女を見ている。

「で、その神官様が人の家で何してるわけ?」
「・・・この紙切れ・・・。見た人は?」
「へ?あぁ、それ?屋敷の人間は皆見てるわよ。何かの伝説らしいけどね」
「そうですか・・・」

ニッコリと笑うとその場でその紙切れを燃やした。
女は凝視する。

「手品・・・な訳?」
「いいえ・・・。そして、これを見た人間は全員『死』を意味します。さようなら」

ドスッと女の身体を錐で貫いた。

「がはっ!!」
「・・・ごちそうさま。貴女の負の感情は美味しかったですが、あの人以上の極上の味ではありませんね」

そして女を身体を貫いたままで火事を起こす。
火はあっという間に燃え上がり、そして屋敷を飲み込んだ。

ゼロスはその場から姿を消し燃えさかる屋敷の真上に居た。

「・・・リナさん・・・」

貴女がいない毎日がこんなにも退屈だったなんて思いませんよ・・・。


全てを見届けた後、その場から消え去った。




「ただいま戻りました」
「ご苦労だったな・・」
「・・・いえ・・・」
「退屈か?」
「いえ、そのような事は」
「まぁ、良いわ。あの娘は未だにお前を惹きつけているのだな」
「・・・」
「今は用は無い。ゆっくり休みをとれ」
「畏まりました」

ふっとゼロスはその場から消えた。
思い出すのは彼女の事ばかりだった。

『何、そんなに悲しそうにしてんのよ』
『悲しい・・・?僕が・・・?』
『そう、あんたの瞳が悲しいっていんのよ!!』
『・・・そう・・・ですか?』
『あんたに言っても仕方ないんだけどね。でも、そういう顔はやめて』
『はぁ・・・』

今はいない彼女の言葉。

「リナさん、僕は今でも悲しい瞳をしているのでしょうか?」


その問いに答えるものはいない
 

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