その日まで。








――ねえ、悟史くん。









今日は私の用事で、街に沙都子も連れて一緒に行った。
今はその帰り。外はもう真っ暗で、冬だからとても寒い。
二人とも厚着だからよかったけれど。

「今日はありがとうございますね、沙都子」
「いえ、こちらこそですわ。肉まんごちそうさまでした」

にこっと微笑む沙都子に、私も微笑み返した。

12月。まだ悟史君は目覚めていない。
あの時から私は、悟史君の約束を守り続けている。
ちゃんとできているか自信はないけれど。私なりに、精一杯やっている。

一度は殺してやりたいほど憎かった少女。悟史君を苦しめていた少女。
その少女が今は隣で笑っている。とても不思議な感じだ。
昔はどうあれ、今はこんなに、大切だ。本物の妹のよう。

「ねえ、沙都子」
「何ですの?」

わたしは一息ついて、沙都子を見て、言った。
今のこのどうしようもない気持ちを知ってほしくなったから。

「私は、悟史くんの事が好きです」
「え、ええ……。知ってますけれど?」
「ものすごく大好きなんです」
「…………」

今度は何も言わなかった。その代わりその大きな目でこちらを見返す。
……成長したな、この子も。
あの時からは想像もできないくらいに。しっかり、ちゃんと、立っている。
自分自身をもっている。うん、強くなったね。
私は微笑んだ。


「沙都子のことも大好きなんです」
「……え?」

小さな頭に手をのせて、軽く撫でた。

「私は沙都子が大好きです、大切です」
「…………」
「だから……って言ったらなんか変なんですけれど、これからも悟史君が帰って来るまで、

――一緒に待ちましょう」

沙都子は何も言わずに笑った。





何も言わなかったけれど、この子も分かっていたはずだ。
あの時……

「詩音さんは私のねーねーなのですよ!」

そう言ったことが、涙が出るほど嬉しかった。

私と沙都子はもう、家族と同じようなものだ。



冷たい手と手を繋いで、私達は雛見沢に帰っていった。








私は約束を守っているよ、沙都子も元気だよ。大丈夫だからね、安心して。
だから、ちゃんと目を覚ましてね。
いつまでも、二人で待っているから。






(20070723)











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