朧げな闇夜
□僕は遥か彼方へと眠る
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一難去ってまた一難。
気分はまさにそんな感じだった。
目の前には25段ぐらい有りそうな長い階段。
(…なんで僕はこれを忘れてたのかなぁ!!)
いつも毎日登り降りしているはずなのに。
思いがけない
(――てか、忘れてる俺って馬鹿?)
障害物に、
軽く貧血をおこしかけた。
それでも幸いな事に、
階段には去年腰を痛めた父親の為に『必要ない!!』と言われながらも無理矢理押しきる形で、
妹が業者に付けてもらった手摺がある。
(……『あの』妹も、役に立つんだな)
僕は即座に妹の顔を思い浮かべた。
今風に髪の毛を茶髪に染め、
化粧ノリを良くする為か、
全部剃られた眉の上にモデル並の極太極長眉毛、
もともと目がくっきりしていて長いまつ毛にマスカラをドバッと塗り、
『今流行りの目尻力〜v』とかなんとか歌いながら目元に15分も時間をかける今どきの中学生だが、
家の中では一番妹が強い。
妹を単語で表すと、暴君、唯我独尊、暴虐無尽、鬼、悪魔なんて邪悪で禍々しいものしか思いつかない。
仕事で疲れて帰って来た父に、
永遠と彼氏の愚痴を言い「寝かせてくれ」と父がお願いしても無視して徹夜させておきながら、
悪びれもなく「あれ、会社に行かないの?」とほざいたり、
たまたま学校から帰ってくるのが遅れてバイトの時間に追われながら夕食の支度をしていた僕に
「私の宿題全部やってくれるまで、家からださないから!」と台所に閉じ込められた事もあった。
だからこそ百害あって一利なしだった妹に少しだけ感謝する。