首から胸にかけて、熱が身体を灼いた。
あっ、と思う暇もなく床に沈む。
もはや抵抗することも忘れた腕が一度だけ宙をかいた。
その腕も押さえ込まれて、身体はすっかり男の下に収まってしまった。
「ひ…痛ぁ…」
「あぁ、すいませんねぇ、でも安心して。つまらない傷なんて付けてませんから。勿体ない」
そう、
喉が灼かれたなんて錯覚で、この男は私に触れただけ。
ただ本当に、この男に触れられた箇所は焼き鏝でも当てられたみたいに傷むのだ。
ああ、でもきっと
灼かれてるのは、頭のほうで。
「白くて綺麗な肌ですねぇ」
がりがりの身体をそう表現されたのは初めてだった。
さらりと流れた銀髪が頬に当たった。検分するみたいに上から下へと動く視線を避けるようにして身を竦ませる。
着物はすっかりはだけていて、着ていなくても同じ様なものだったからあまり意味はなかったけれど。
きょろりと動いていた瞳がきゅうっと細められた。
相変わらず声も出せないほど怖ろしく、全てを忘れるほど美しい。
「み、つ、秀、さま」
光秀はよく私の身体を舐めたり、吸ったり、かじったりした。
「我慢出来なくて、つい」
とちらり舌を見せられた時には卒倒しそうになったものだけど
いつ殺されるかと怯え続けるのと裏腹に、腹に付いた歯形以上の跡は残っていなかった。
(表面上、は)
今も光秀が楽しそうに舌を這わす。その箇所からひりひりと上がってきた熱が私の脳すら灼くのだ。
「たた、楽し、い、ですか」
意外なことでも聞かれたみたいに光秀が顔を上げた。
「楽しいというより、美味しいですねぇ」
「へ…」
「特にこのあたりなんか」
ぺろりと顎の下と首筋を舌が這う。
再び生まれる熱。
「あ、味とか、する、の…?」
「ええ、とても美味しい」
にこりと笑った銀色の月にしばしぼうっとする。
見とれたか、熱に浮かされただけか、もう違いはわからなかった。
「歯をふつと立てたらさぞかし綺麗でしょうねぇ、白と赤、赤と白、零れてひとつに、あぁ、たまりません…!」
「ひっひぃ…?!」
見とれたことは勘違いであればいいと、恍惚の表情で天を仰いだ光秀を見て思った。