Short Novel 2
□許婚はヤキモチ妬き
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「乱馬、パス!」
クラスメイトがバスケットボールを勢い良く放り投げた。
それを乱馬が受け取り、相手チームが防ぐ隙も与えないまま、軽やかにシュートを放つ。
弧を描いたボールは華麗にゴールネットを揺らし、しゅぱんと音を立てて通過した。
そして審判役の先生が笛を吹いた瞬間、
体育館内が歓声と拍手に湧いたと同時にチャイムが鳴って、体育の授業が終わりとなった。
「あかねの許婚くんは相変わらずすごいわね〜。」
コート脇で一緒に見ていた友達のゆかの言葉に、
ちょっとかっこいいかもと思いながら眺めていたあかねは何と言ったらいいかわからず、顔を赤らめた。
彼の運動神経の良さはズバ抜けており、どうしたって目立つ存在だ。
他の授業では睡魔と戦かっているか、
どう時間を潰すかなどして過ごしている乱馬には唯一楽しみな時間だけあって、
水を得た魚のようにはしゃぐ姿は一層キラキラとして見えた。
当然乱馬のいるチームが勝ち、仲間と機嫌よくハイタッチを交わす。
そんな中、クラスメイトの右京がいそいそと駆け寄り、スポーツタオルをサッと乱馬の首にかけた。
「乱ちゃん、かっこよかったで〜。」
とびきりの笑顔で褒めちぎる。
へへっサンキュー、とヘラヘラ笑う乱馬を見た途端、
それまで恥ずかしそうにしていたあかねの顔があからさまに、ぶすっとなった。
さらに、嫌なことというのはたいてい重なるものだ。
ガラッ!と勢い良く体育館の扉が開け放たれたかと思うと、
ここの生徒でもないシャンプーが、絶妙かつ最悪のタイミングで乱入してきた。