Short Novel 2
□A little more…【挿絵付☆】
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日脚が短くなり、秋の深まりを覚える季節。
天道家では秋刀魚の焼けた香ばしい匂いが広がる。
「いっただっきまーす!」
「いやあー収穫の秋だねー、早乙女くん。」
「色々食べ過ぎて困っちゃうねぇ、天道くん。」
そんな、家族みんなで和気あいあいと食卓を囲んでいる夕食時、事件は起こった。
「かすみさん、おかわり!」
「はい、どうぞ。」
てんこ盛りでご飯をよそってくれたかすみから茶碗を受け取り、わしわしとかき込む乱馬。
ニコニコと上機嫌でおいしそうな焼き秋刀魚に箸を伸ばしたその時、
向かいに居た玄馬の目がキラリと光った。
「わちゃちゃ〜っ!!」
と、意味不明な奇声に思わず怯んだ瞬間、
箸を伸ばした玄馬が電光石火の早業で乱馬の秋刀魚を皿から奪い取ってしまった。
乱馬が「あっ?!」と思った時には、大事な主食はもう口の中。
「親父っ…てんめ〜〜っ!」
モグモグと幸せそうに食べている玄馬を、
心底悔しそうに、殺意を抱いた眼つきでギロリと睨みつける。
しかし、ここで泣き寝入りする乱馬ではない。
「あ!100円落ちてる。」と叫んで畳を指差せば、
「えっ、どこどこ?!」
すちゃらか親父は飯も忘れ、這いずり回って必死に探し始める。
そうなるとしめたもの。
今度は乱馬が隙アリ!と、玄馬の皿に乗ったたくあんを1切れ残らずかっさらうと、得意げに口へと頬張った。