Short Novel 2
□starting
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「でも、随分伸びたわね、あかねの髪。」
「本当、キューティクルがキラキラしてる。」
「ありがとう…」
昼休みの時間。
かすみお姉ちゃんが作ってくれたお弁当を食べ終えフタを閉めたところで、友人達が私の髪を褒めてくれた。
笑顔を作り、そっと自分の髪に触れる。
学校は楽しい。
勉強は、頑張れば頑張った分だけ結果になって返ってくる。
身体を動かす事が好きだから、体育の授業で汗を流すことも心地いい。
なにより、友達と毎日他愛のない話をすることが一番好きかもしれない。
どこどこの喫茶店の新作ケーキがおいしい、
あのキャラクターが可愛い、
あの雑誌の星占いは怖いくらい当たるとか、
本当に他愛のない話だけど、尽きることのないガールズトークが好き。
だけど、時々自分の顔が強張っているのがわかって、慌てて笑顔を作ることがある。
そういうときは決まって、恋愛話。
「あかねって、好きな人いないの?」
「いるわけないじゃない!男嫌いなのよ、あかねは〜。」
誰かが問えば、親友のゆかかさゆりのどちらかが私の代わりに答えてくれた。
そして私はいつも決まって、その答えに大きく頷いて同意する。
そう、誰にも打ち明けた事のない想いを、さらにさらに頑丈にして鍵をかけて閉じ込めるの。
あの人への恋心は、私だけの秘密だから。