Short Novel 2
□愛されあかねの一日
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「ケホケホッ…」
夏服の制服が冬服に替わる季節。
天道家の居間に、それはそれは弱々しい咳が響いた。
「あかねちゃん、やっぱり今日はお休みしたら?」
「うん…でもテスト近いし。昨日1日たっぷり寝て熱は下がったから、大丈夫!」
かすみの呼びかけに掠れた声でそう応えたのは、この家の三女であるあかねだ。
一人だけ別メニューで作ってもらった朝粥をゆっくりと口に運ぶあかねに、早雲が心配そうに顔をしかめる。
「そうは言ってもあかねぇぇ、そんなガラガラ声じゃ〜…」
学年は違えど同じくテストが近いなびきがまあまあ…と諭す横で、玄馬が乱馬の頭を思い切りこずいた。
「このバカ息子がっ!」
「いって〜な!!文句ならじじぃに言え!」
「おじいちゃん、都合が悪くなるといなくなるのよねー」
なびきの一言に、家族全員が苦い顔をした。
何故、珍しくあかねが風邪を引いたのか。
ことの次第は、一昨日まで遡る。