Short Novel

□誰かが背中を押した後
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俺がこの山道をさ迷い始めてから、もう10日は経っただろうか。


高々とそびえ立つ、赤や黄色に色付いた木々。


何処までも続く、獣道。


おかしい…

ずっと同じような道を歩いている気がするぜ…。


俺が目指しているのは、あかねさんのいる街だ。


一体、いつになったら天道道場に辿り着くのか…?


ああ…あかねさんに早く会いたい…!


「いったいここは、何処なんだ!」


俺が空に向かって大声を上げたとき…


ぶぎゅる。
「よー、良牙じゃねぇか。」

突然降りかかった衝撃。


…俺を踏みつけて声をかける奴は1人しかいねぇ。


「乱馬!」

だが、何故ここに??


「良牙くんじゃない!」

「あっ…あかねさん!?」


乱馬の後ろから、会いたくて堪らなかったあかねさんがヒョイッと顔を出した。



なにぃ!?
あかねさんもここにいるということは…


「ここは天道道場!?」


俺は知らず知らずのうちに天道道場に辿り着いていたのか!


俺が感動をしているのも束の間、

「あほ。ここはただの山だ。」
と乱馬のツッコミが入る。


「良牙くん、修行に来てたの?」

「ええ、まあ…。
あかねさんはどうしてここに?」

こんなところで、あかねさんに会えるなんて…!
運命を感じるぜ…!


「どーせ迷子になってたんだろ。」

「うるさいっ。お前は黙ってろ!」

くっ…さっきからチャチャ入れてきやがって!

いちいちうるさい乱馬に、みしっと蹴りを入れる。


「ここの村の人達に頼まれて、化け物退治に行ってきた帰りなの。」


「そうだったんですか。」


キラキラと笑顔が眩しいあかねさん。


ああ…あかねさん…

俺はその笑顔を見て、今日ここで偶然出会えたことを神様に心底感謝した。



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