Short Novel
□Memories
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寒さと暖かさを繰り返し、やがて桜が咲く季節がやってくる。
学校帰り。
蕾が膨らんで、まもなく開花するであろう桜の木を見上げながら、私は入学式の頃のことを思い出した。
お姉ちゃん達と同じ制服を着られることが嬉しくて、かなり前から浮かれていたっけ。
真新しい制服に初めて袖を通した時の喜びは、今でも忘れない。
肩まで伸びた髪を丁寧にクシでとかして、かすみお姉ちゃんがしていたような、リボンを付けて。
早く見てもらいたくて、式が終わったら急いであの場所に向かったのよね…
「やあ、あかねちゃんじゃないか。今帰りかい?」
「と、東風先生!こんにちはっ。」
やだっ私…
懐かしさで無意識のうちに、小乃接骨院に向かっていたみたい…!
往診から帰る途中の東風先生とバッタリ会ってしまった。
何やってるんだろう…。
「久しぶりだね〜。良かったら、お茶でも飲んでいくかい?」
「あ…はい!」
そう言って笑う東風先生の顔を見て、私は再び懐かしさがこみ上げてきた。