Short Novel

□誰かが背中を押した後
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笑顔が眩しすぎて直視できずにモジモジしていると、乱馬が意外なことを言い出した。


「おめー、どうせ天道道場へ行きたかったんだろ?
一緒に行こーぜ。」

「なっ…本当かっ?」

「そうよ。良牙くん、うちでお夕飯食べていったら?」

「い…いいんですかっ?」


乱馬の野郎、今日はやけに良いこと言うじゃねーか!

意外といい奴だな…!


しかも、あかねさんの家で夕飯もご馳走になれるなんて…!


乱馬とあかねさんの優しさに、俺は思わず感動で目頭を押さえた。



***


3人でしばらく歩いていると
単線の小さな無人駅に着いた。



考えてみれば…
あかねさんと電車に乗るなんで、何だかデートみたいじゃないか!?


乱馬は余計だが…
電車デート…
いい響きだせ!


そうだ!あかねさんに今回の旅での武勇伝でも、聞いてもらおう!


『きゃ!良牙くんて素敵ね!』

なーんて、あはははは。


俺は上機嫌で財布から数枚のお札と小銭を取り出し、切符売り場の自販機に手を伸ばした。



「乱馬!大変!旅館の女将さん、多めに包んでくださってる!」

「うわっ!すげえ!」

「貰いすぎじゃないかしら…。」

「大丈夫だろ。この先の街の駅で土産くらい買ってくか。
親父達がめついし、こういうのうるせーからな。」



…ちゃりーん。


俺の手から、いとも簡単に小銭がすり抜け、落ちていく。


…聞き間違いだろうか。


後ろから聞こえてくる2人の会話は、もはや化け物退治に行った帰りではない。

…そう、まるで旅行だ。



「あ…あの、あかねさん。2人はいつからこの山に?」

「昨日からよ。
帰りの電車賃が無いことに気づいてね、色々あって旅館に泊まったの。」


がーーーーん!!


昨日旅館に泊まっただと?

乱馬とあかねさんが?

2人きりで?


俺はてっきり、日帰りだとばかり思っていた。


それが、2人で泊まっただと?

しかも、色々あったって何が??




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