長編
□誰かが背中を押したとき5
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チッチッチッ…
部屋の時計の音だけが、静かに鳴り響く。
どっくん
どっくん…
その部屋の中に、乱馬とあかねが2人きり。
何故かそれぞれの布団の上で、向かい合って正座をしていた。
微妙な距離を保ちつつ、チラリと相手を見ては、目が合うと慌ててうつむく。
「ふっ夫婦だって誤解されてるんだもの。仕方ないわよね!」
「あっああ!そうだなっ。仕方ねぇよなっ。」
なるべく普通にしようと努めるが、いかんせんウブな2人。
ぎこちない会話をしたかと思うと、すぐに沈黙してしまう。
とりあえず、布団は出来るだけ部屋と部屋の隅にそれぞれ離してみた。
そんなに広くはない部屋なので、こぶし大くらいしか離れていないのだが。
「…し、心配すんなよ。
おめぇみてーな色気のねぇ女、手ぇ出すわけねーだろっ。」
とうとう、ぎこちない空気に耐えられなくなった乱馬が、あかねに悪態をついた。
「ふんっあんたみたいな根性無し、怖くないわよっ!」
ザッ!
一触即発。
距離を取ってお互いに構えをとる。