長編
□変わりゆく心3
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1時限目の授業中、あかねはずっと、ぼんやり自分の右手を見つめていた。
殴ったり蹴ったりしなかった今朝の一件が、自分で信じられないらしい。
優等生のあかねには珍しく、先生の授業が全く耳に入ってこないようだ。
「私、どうしちゃったのかしら…。」
「凶暴なおめーが凶暴じゃなくなったんだ。いいことじゃねーか。」
自分の拳を見つめながらポツリと独り言を呟くあかねに、隣の席にいる乱馬が小声でケラケラと笑って茶化す。
「あのねぇ。」
乱馬の言い草に、あかねは頬を膨らまして睨み付けるものの、やはり殴ろうとはしない。
あかねは「はぁ…。」とため息をつくと、今度は左手の人差し指にはめられた指輪を見つめて呟いた。
「この指輪もねぇ…。」
指輪は担任のひな子先生に事情を説明し、他の先生にも話をしておいてもらうことになった。
乱馬がチャイナ服、九能先輩が剣道着姿で闊歩しているこの風林館高校に真面目な校則が存在するかは不明だが、
アクセサリーは一応マズイかと、ひな子先生に事情を説明したのだ。
話を聞いたひな子先生も「私に任せなさいっ!」と息巻いて、先生なりに外そうと試みてくれたまでは良かったのだが、
外せない指輪にイライラが募って、最終的にあかねが八宝つり銭返しを打たれそうになるという、ちょっとした騒ぎになってしまった。