長編
□変わりゆく心7
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みんなが寝静まった頃
乱馬は、天道道場の屋根の上で寝転びながら、ぼんやりと考え事をしていた。
こんな真冬の夜空の下でも、今の乱馬にはあかねの事で頭が一杯で、寒さなど感じる事さえ忘れていた。
あかねのアホ。飯の時、一度も俺と目を合わせようとしなかったな。
「…はぁ。」
それに、あかねが格闘をやめると言い出した時に一瞬頭によぎった事が、現実のものとなってしまった。
“許婚を解消するわ。”
あかねもあかねだ。
百歩譲って俺が挑発に乗っちまった事は悪いとしても、迷惑だなんて言った事をまさか鵜呑みにするなんて。
本当に俺が迷惑だなんて思ってると、思ってんのかよ…?
「あかねの馬鹿野郎…!もう知るかっ…。」
先程から一人、ぐるぐると頭の中で悪態を付いてみたり、声に出してみたりを繰り返す。
しかしハッと我に返ると、乱馬はすぐに自分の顔をバキッと殴り付けた。
「…ちげーだろ。何であんなこと言っちまったんだ、俺は…。」
素直に言えなかった自分を悔やみ、乱馬はワシワシと自分の頭を掻きむしった。