長編
□変わりゆく心9
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「……。」
ボロボロになった体を棒切れで支えながら、ヨロヨロと風林館高校前に佇む一人の男。
先程までシャンプーに追い掛け回されていた、乱馬だ。
しかし。先程までといっても、小一時間くらい前の話。
やっとのことでシャンプーを撒いて学校にやってきたものの、家を出てからだいぶ時間が経過していた。
のどか達に背中を押されて家を飛び出してきた勢いはすでに無く、
乱馬はしばらくの間悶々と、校門前で立ち往生していた。
はぁ〜。よく考えてみりゃ、何て言葉をかけりゃーいいんだよー…。
“許婚をやめるなんて、言うなよ。”
“俺の側にいろよ。”
“好きだ。”
“愛してる。”
“捨てないで。”
だ〜〜〜〜っっ!!!言えるわけねぇだろっ!!!!
どっどっどっ…
緊張で、心臓の鼓動ががどんどんと激しくなっていく。
キーンコーンカーンコーン…
こうして乱馬がジタバタとしていると、やがて校舎から昼休みの開始を知らせるチャイムが聞こえてきた。
「…も、帰ろかな…。」
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