長編
□メロウな夜【前編】
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ふと 寝苦しさで目が覚めた。
薄暗い中
チラリと横を見やると、汗で濡れた毛に覆われたパンダがガーガーといびきをかいて寝ていた。
人間でも暑くてたまらないというのに、わざわざ毛皮に覆われた姿で毎晩寝苦しそうに寝ている親父が、今日は一層イライラさせる。
部屋の時計に目をやると、針は午前2時を過ぎていた。
枕元に在ったうちわでパタパタと仰いでみるも、それは気休めに過ぎず、ダラダラと吹き出す汗は一向に止まらない。
連日の熱帯夜で、こうして夜中に目を覚ますことは珍しいことではなかった。
しかし、今日は何故だかいつにも増して寝苦しい。
ねっとりとした湿気を帯びた空気が、とにかくうざったい。
とても寝付けそうにないと判断すると、暑苦しい姿の親父にドカッと一発蹴りを入れ、居候部屋を出る。
ふすまを閉めた際、「パフォ?」と寝ぼけた声が聞こえたものの、再びガーガーとうるさいいびきが響いた。