長編

□なにがあっても2
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「ちなみに乱馬くんの事、わかるのね?」
「うん。」

「あんたの許婚ってことも?」
「…うん。」

何故乱馬の事ばかり聞くのかとでも言いたげに、
あかねは苦虫を噛み潰したような顔で答える。


「でも、あかねがしがみ付いているのは乱馬くんじゃなくて…」

「だから、ムースが好きなんだってば!」


絶対におかしい。

しかし、
ふざけているわけでもなければ
冗談でもない様子に、
乱馬は顔をピクピクと引きつらせるしかなかった。



一同が唖然とする中、

「記憶喪失じゃないとすれば、もしやすりこみ…?!」

顔面蒼白の早雲がゴクリと息をのみ、
そう呟いた。

その横で得意げにパンダ姿の玄馬が
グォリグォリと胡麻を擂ってみせれば、

「おじ様、それは胡麻擂り」と
かすみがのほほんと突っ込む。




すりこみ…それは
胡麻擂りでも張り込みでもなく、
生まれたてのヒナ鳥が最初に見たものを
親と思いこむ鳥の習性のことである!




「鳥か、あかねは!!!!
いつぞやの鳳凰のヒナじゃあるまいし!
人間にそんなこと有り得えねぇーだろっ。」

「しかし、実際あかねが一番最初に見たのは彼だというじゃないか…。」


一同が一斉にあかねを見つめ、
部屋の中がシーンと静まり返る。

当のあかねは、きょとんとしている。



信じ難いことではあるが
確かにあかねは目を覚ました直後、

最初にムースと目が合い、
突然妙なことを言い出したことは事実だった。



「いや、仮にすりこみだとしても、好きだなんてなんでまた…。」




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