長編

□なにがあっても3
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「それじゃ乱馬くん、先に行ってるわね。」

そう言って玄関へ向かうなびきの後を
乱馬と言葉を交わすことなく
あかねが追う。


すれ違い様にギロリと睨まれ
乱馬も負けじと睨み返したものの、
内心はグサリとくるものがあった。

昨日のムースとのやりとりで
相当嫌われてしまったらしい。



やっぱり昨日の今日じゃ、治ってるわけねぇか―――



あかねを目で追っていると
そこでふと、ねちっこい視線を感じた。

今のやり取りを一部始終見ていたらしく、
先に居間にいた親父達二人と目が合い
しらじらしく視線を逸らされた。

乱馬は煙たそうにちゃぶ台の前に座ると
半ばヤケクソ気味に朝飯をかき込んだ。



「乱馬くん大丈夫よ、東風先生もすぐ治るっておっしゃってたじゃない。」

まるで泣きそうな顔でもしていたのだろうか?


そう言って
お茶を煎れてくれたかすみに、

「別にっ。あかねが誰を好きになろうと俺には関係ねぇしな。」

乱馬は慌てて気にしていないふりをした。



…が、ただならぬ気配にポロリと箸を落とす。

早雲が読んでいた新聞を
ぱたんと静かに畳んだ次の瞬間…

「乱馬く〜ん!うちのあかねを見捨てる気じゃないだろうねぇぇ!」

でんでろでろでろ…!

と妖怪と化した早雲に詰め寄られ、態度は一変。


「いやいやいやいやまさか!めっそうも無い!い、いってきまーす!!」

必死で顔をブンブン横に振ると
食事もそこそこに、
乱馬は逃げるように居間を飛び出した。



はあ…これは暫く大変かもしれねぇな。


寝不足な上
ろくに朝食もとれず、
益々重い足取りで玄関へ向かう。

ふわ〜っと
大きなあくびをしたところで
人の気配を感じ、ビクッと肩を竦めた。


「あかね…?」

そこには意外にも、
なびきと共に先に家を出たはずの
あかねが一人で立っていた。


「お姉ちゃんが…どうしても一緒に行けって。」

目が合ったのも束の間、
フィっと視線を逸らし
不服そうに呟いたあかね。


「そ、そっか…。」

なびきのやつ、余計な事を…

思いがけず二人きりになってしまい、
乱馬は緊張している自分に戸惑った。





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