アオイトリ

□アオイトリW〜眠る檻〜
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『良かった。お願いがあるんです、今からそちらへ行きますね』
「はッ?! いや、こっちに来るって、ええ!? 私実家なんですけど!」
『ええ、あと20分ほどで着きますから…用意しておいて下さい』

ぎゃーーー!!!
本気だ、本気で来る気だよこのひと!

ていうか私の実家をいつの間にッ! は、そりゃ知ってるか、雇い主…、

『では、茅乃さん、また後で』
「いやいやいやちょっと待って理事長ッ?! 暁臣さんっ!!? …切りやがった…!」

と、いうことは、この家の前にドドーンと高級車が…。

真っ青になった私は荷物を取りに階段を駆け上がった。
自室に置いていたバッグをひっつかみ、再び下へ。

「姉ちゃん? 何ドタバタしてんの」
「あ、正志ゴメン私帰るね、お父さん達に言っといて!」

すれ違った弟にそう言い残して玄関へ走ったけれども、その手前で母に行く手を阻まれる。
急いでるのにぃ〜!

「茅乃? お酒の追加持って来てちょうだい」
「もう飲ますな! てかそれどころじゃ…」

ピンポーン。

ひいいいいッ!?

あらお客様、とパタパタ玄関へ向かう母。

「おかーさん、出なくていいからっ、いいからお迎えしないでぇえッ!!」

私の叫びも虚しく、母は戸を開け。

「はい、……」

「明けましておめでとうございます、お忙しい時間にすみません。
 古賀と申しますが、茅乃さんはご在宅でしょうか」

今日も隙なく高級スーツを身に纏い、キラキラしい微笑みを浮かべ我が家に現れた殿下を、ポカンと見上げて固まる母。

うげぇ、と弟の声。

何だ何だと座敷から湧き出る親戚達。父の顔を見る勇気はなかった。

私は天を仰ぐ。

いっそ殺せ…。




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