アオイトリ
□アオイトリW〜眠る檻〜
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はあ〜。
御曹司ってタイヘン。
パーティー会場に着いた途端周りに人が集まって、次々に挨拶が交わされる。
私は理事長の横で上品に見える微笑みを浮かべてれば済んだけど、彼はいちいち相手に見合った言葉を掛けて、対応していた。
もしかしなくても全員の名前と立場を覚えてるんだ?
現在ヒヨウの社内では部長でも、いずれ社長になると目されている彼とお近づきになっておきたい人が後を絶たず、やっと解放されたのは会場に入ってから随分時間が経っていた。
これが理事長の世界か。
そりゃストレスも溜って私を弄びたい気分にもなるわ。
飲み物を取って来ますねと理事長が私から離れた隙にどこぞのオジサマ方に囲まれる。
少し離れた所に居られる着物娘さん達のお父様かしら?
玉の輿狙い?
「暁臣さんのパートナーのようですが、一体どちらの御令嬢でいらっしゃいますか?」
「最近は妹君をエスコートしていた彼がお連れになるほどだ、将来の…?」
上から下まで品定の目が走り、表面はやわらかだがねちねちした詮索の言葉が投げ掛けられる。
「申し訳ありません、わたくしからの名乗りは控えさせて頂きます。暁臣さんから正式な紹介があるまでどうぞご容赦を…」
微笑みながらそそと答えて人波を泳いだ。
あ〜〜、女優の仮面が剥がれてくる。
理事長どこまで飲み物取りに行ったのよ?
ていうか立食なのにがっつけないのが悔しい。
「貴方どこの方?」
トゲのある女性の声が私にかけられる。
振り向くと、全身お金の掛ってそうな美女。
おうおう来た来た〜。
ニンマリしそうになった顔を、あやしくないくらいの笑顔に保ち、おそらく理事長の過去のオンナだと思われる彼女に、何か? と可愛いらしく首を傾げてみせる。