アオイトリ

□アオイトリW〜眠る檻〜
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「名前を聞いてるの。どこのオンナ?」

明らかに私を見下してかかる美女に、私は無礼に無礼で返す。

「わたくし、自分から名乗らない方に教える名前は持ち合わせておりませんの。失礼致します」

余裕の笑みで背を向ける。

恨みを買いそうだが今の私は楠木茅乃じゃないのでへっちゃらさ。
しかしオンナの趣味悪いな、理事長。形は良いけど性格悪そう。

…自分に返って来るからやめよう。



人の頭の隙間から理事長を発見したものの、社長(前理事、つまり暁臣くんのお父様だ)と他の偉そげな方々とお話している様子に私は慌てて隠れる。

ヤバいヤバい。

下手に顔を見せたらばれちゃうかも。


仕方なく壁際に寄って、目立たないように料理を楽しむことにした。


さっきの部屋に戻っちゃ駄目かしら。
コンタクトがそろそろ合わなくなってきたのか眼が疲れて頭痛がする。
人いきれにも酔ったのかも。

別世界だもんなぁ…。


休憩用の椅子に腰掛け、理事長とこんな関係にならなければ見なかった光景を傍観者気分で眺めた。

きらびやかな会場を行き交う、要するに上流社会の人々。

何だか舞台の上にいるみたい。

確かに今、私は理事長の恋人役をしてるけど。

作り物めいた笑顔が交わされるこの場所にいれば、何が本当かわからなくなる。


彼は、そんなことないのかしら?



「顔色が優れませんが、ご気分でも?」

ぼうっと考え事をしていた私は、側にそっと立った少年の声に顔を上げる。

「ミネラルウォーターです。どうぞ」

ボンヤリしたまま渡されたグラスを受け取り、よく冷えた水を一口飲んでから、少年に見覚えがあることに気付きギクリとした。

…うちの生徒だ…!



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