SPECIAL
□花風〜Sweetdream〜
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――幼なじみの彼にプロポーズされたのは、大学を卒業して、就職し仕事にも慣れた二年目のこと。
思春期辺りから、意地悪や憎まれ口ばかりで人に突っかかってきていた彼と、そういう仲になったのは大学に入ってからだ。
付かず離れずにいた腐れ縁の幼なじみ関係が、ずっと続くと思っていたのに。
いい加減素直になれよと、自分こそ素直じゃない言いぐさで、突然恋人にされたのだ。
彼にはセフレ状態の女が余るほどいたし、ただ単に、自分の持ち物だと思っていた幼なじみを手放したくなくて――小さい頃お気に入りだった玩具を、成長と共に片付けなきゃいけなくなったときのような――そんな気分だったんだろう。
泣きたくないな、でも多分泣いちゃうんだろうな、と思いつつも自分から別れなかったのは、やっぱり、あたしも好きだったから。
どうせ長続きはしないんだから、甘い態度、今のうちに堪能しておこう――。
そう思っていたのがとんだ間違いだったと気付いたのは、暫くしてから。
彼はあたしと付き合いはじめてすぐ、不特定多数の彼女たちとキッパリ縁切りし、朝も昼も夜も、束縛するようになって。
男どころか女友達にも妬いて、拗ねながら、お前の全部は俺のなんだからなと、無茶苦茶なことを言い出した。
ぎゅうぎゅう抱きしめられながら言われるそれに、戸惑いつつも慣れて行き。
どうやら一時のことではなく、ホントの本気でそう思っているのだと理解したときには、いわゆる“給料3ヶ月分”な指輪を渡されて。
結婚式で、義母となった“おとなりのおばちゃん”に、彼の園児時代からの壮大な『果林ちゃんと作る家族計画』を聞かされたときは大爆笑して――やっぱり泣いた。
どこまでが彼の家族計画に入っていたのかは知らないけれど、めでたく娘も授かって。
もう一人くらい、欲しいかなと最近話している――夢みたいに、幸せで平凡な日常。
夢、みたいに――。
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