SPECIAL


□未確認的彼氏。
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 小学校生活もあとわずか、の2月。
 誰が言い出したんだかわかんないけど、『6年2組二ノ宮龍流は人間じゃない』というウワサが、我が学年に流れた。
 火のない所に煙は立たずって言うけど、ずいぶん突飛よね。
 龍流と二人、それを聞いた時大笑いしたもんだけど、そーやってあたし達がウケている間に、『二ノ宮龍流 人外説』はどんどん広まっていき、現在、全校生徒九割が知る所となっている。十割になるのももうすぐだろう。
 当事者の龍流も、クラスメート兼幼なじみ兼お隣さんという、長ーーい肩書きを持つ私も、あらあらあら、という感じ。

 ホントにみんな、何考えてるんだろーね。



「退屈してるんだよ、みんな。ようするにさ、卒業前の一騒ぎってとこかな」
 放課後の図書室。隣に座って、あたしの髪を弄りながら、苦笑まじりに龍流が言った。
 腰以上あるあたしの長い髪を、指にくるくる巻き付けたり、もつれているのに気が付いて、手で梳いたり。
 あたしの髪を弄るのは、龍流の昔からの癖なんだけど、傍から見たら、ただイチャイチャしてるよーに見えるんだろうなあ。
 ほらほら、隅っこのほうで龍流のファンの子があたしを睨んでる。
 いーかげん慣れたけど。


 あたし、市瀬水鳥の幼なじみ、二ノ宮龍流はすこぶる顔が良い。
 あと数年して少年から青年になったら、予想に違わずイイ男になるだろう。
 さしずめ今は美少年。
 その美少年にいつもくっついている(どっちかって言うとくっつかれているんだけどね)あたしという存在は、女の子たちにとって邪魔者以外の何者でもない。
 人間じゃなくてもファンはいるんだー?
 なんて思ったりして、吹き出したあたしを龍流が怪訝そうに見る。
「何だよ? 水鳥……」
 言いかけてふと、髪を弄っていた手が止まり、龍流は背後を睨んだ。
 ? ?
 龍流の視線を追って見ると、ありゃりゃ。これはヤバイ。
 本を小脇に抱えて、これまた険しい顔をしたクラスメイトの理一くんがそこにいた。

*
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