トリハナニイロ

□ふぁーすと・でいと?
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「……暁臣くん、今日帰りは?」
「車を呼びますが」

 ってことは、お酒オッケーってことよね。

「学生時代から行きつけの居酒屋……あるんだけど、行く?」
「茅乃さんのですか? 行ってみたいです」

 眉を上げて楽しそうにする彼に一応釘指し。

「キレイな所じゃないよ? 狭いし、タイミング悪かったら人多いしさ」

 にこにこして頷く暁臣くんは、
 でも茅乃さんの馴染みなんですよね、と何故か嬉しそうだ。
 お坊っちゃんめ、庶民の店の狭くるしさを知るがよ い。
 安さと味は保証するけどさ。

 じゃあ行こっか、と方向を定めたところでまた人にぶつかりそうになってる暁臣くんの手を取った。

「もう。どんくさいよ暁臣くん」
「いやこういう人混みは慣れなくて……」

 苦笑してる暁臣くんを見上げてニヤッと笑う。

「悪さしてたときは夜の街なんて馴染みだったんじゃないの?」

「こちらとあちらとは違う……って、誰ですか、茅乃さんに余計なことを…レオですね、勿論……」

 この前会った暁臣くんの悪友の名を出して、苦々しい顔をする彼に笑った。

 いいネタいろいろ貰ったわよ〜、
 そのせいでエライ目にもあったけどさ。

「他に何を聞きました?」
「いやいやぁ、何にもぉ?」
「……その顔は、あることないこと吹き込まれましたね……あいつ、覚えてろ……」

 昔の友人相手だと暁臣くんは年相応になって新鮮。
 滅多に敬語崩したりしないもんね。

 信号が変わる前に渡ろうと、急ぐ私の手を暁臣くんが強く握り直す。
 絡んだ指に、ドキリとして見上げると、さも当然のように綺麗に微笑み返されて。

 ……このう、確信犯め。

 振りほどくのも何だかな、て感じだし、むぅと唇を尖らせてそっぽを向くと、耳元にささやきを落とされた。

「初デート、みたいですね?」

 んぎゃーーー人があえて考えないようにしていたことを!

 今さら恥ずかしいっちゅうのよ、あんなこともこんなこともしてる関係でッ!

 ムキになって暁臣くんを引っ張りながら、早足になる私に、クスクス楽しそうな彼の言葉が追いかけてくる。


 ――特に意味はなかったんです。ただ、茅乃さんに逢いたくなって。

 急に甘い言葉、どうかしてる。


 だけどたまには、


 こんな日もいいかもしれない―――。



end.

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

研修ストレスで一気に書いた、暁臣と茅乃の普通のある日。
何でも無さ過ぎて本編には入らないエピソード。

因みに時系列的には、今書きかけのZ後の話になります。
(7月頃の話)

いやあまりにもパロ(注・20万hit記念メルヘンパロディのこと)でちょこっと出てきた二人に反応するひとが多くて…。
お待たせしていてご―め―ん―な―さ―い―!!

が、頑張ります。

('08/04/22 ブログ閑話休題)
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