SPECIAL


□桃色遊戯〜秘密の指先〜
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「――大丈夫? こっち、おいで」


ぎゅうぎゅうとすし詰め状態になった車内、小柄なわたしは人と人の身体に挟まれて、窒息寸前モウロウとしていた。

そんな状態だから、フラフラのわたしでも倒れずにすんでいたんだけど、気持ち悪くて、たぶんその状況があと数分続いたら吐いていたと思う。


そんなとき。
おしくらまんじゅうからわたしを引っ張り出してくれた腕があったのだった。

崩れそうになった膝が支えられて、少し身体が浮き上がる感じがして、圧迫されていた肺に空気が入り呼吸が楽になって、はあっ、と深く息を吸いこむ。

しばらく酸素吸入に専念してから、わたしはやっとなにが起こったのか把握した。

そっと顔を上げると、スッキリした顎の先が視界に入って、視線に気がついたその人が首を傾げる。

さっきまでの暑さとは違った熱がわたしを支配する。

わたしを電車の壁の出っ張りに寄りかからせて、自分の体で周りの人々から守るように空間を開けてくれたその男性は、すごくカッコイイひとだったのだ。

*
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