アオイトリ
□L'Oiseau bleu.
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「……ここは私の一族が経営するホテルで、最上階のスイート数部屋を常にキープしているんですよ。女性はこういうところ、お好きでしょう……?」
細い身体を組み敷いたまま、そっとささやく。
理事室で彼女を犯したあと、自失した彼女をここまで運んだ。
連れ帰るのは自宅でも構わなかったが、そうするとただでさえ壊れかけた自制心が吹っ飛び、おそらくそのまま彼女を監禁して、もう二度と外へ出さないような気がしたのだ。
彼女を、自分だけのものにしたい。
だが、意思をなくした彼女が欲しいわけではない。
――愚かな真似をしている。自分でもわかっていた。
だが、止められるものなら最初から止めている。卑怯な開き直りを頭の中で呟きつつ、腕の中の女性を見つめた。
今までにさほど強い性交の経験はなかったのか、一度目で既に大半意識を飛ばした彼女は、遠慮のない私の行為がひどく堪えているようだった。
躯は成熟しているのに、彼女の示す反応には初なところが見られ、それがかえって私の欲を煽る。
荒く息を吐いて呼吸を整えていた、虚ろな彼女の瞳に力が戻る。瞬きを繰り返し、それが気のせいじゃないことを理解したのか――眉がしかめられた。
りじちょう、と未だ頑固に役職名で私を呼ぶ声に、目を細める。
だめ、ナカ、と呻いて震える手を私の胸について身を離そうとする彼女に、笑みを浮かべて。
今さら気づいたのだろうか、私が避妊せず自分の中にいることに。
おそらく拒むためだろう、彼女の内側が異物を排除しようと蠢く。――全くの逆効果だと思いもせず。
小休止はこれくらいにして、と再び動き出す。細く折れそうな腰を掴んで、ギリギリまで引き抜いて緩んだところを強く奥まで突いた。悲鳴じみた声を上げて、彼女が抗って身をよじる。
「い……っ、ぃや、おねがい…っ……もうやめ、やめて――」
否定の言葉ばかり口にする彼女に、身勝手にも苛立ちが募った。
わざと、中で放ったものを理解させるように粘ついた水音を響かせる。しゃくりあげる彼女の耳を食みながら告げた。
「避妊なんて、勿体無いことしませんよ……? 漸く、手に入れたのに――」
首を振る彼女は、長く続く情交に朦朧としているのか、私の執着めいた言葉にも反応せず、ただ身体を戦慄かせていた。
半ば意識を失った状態でも私にすがりつくことはせず、シーツを強く握りしめて、無理矢理に与えられる快楽に耐えようとする。
思い通りにならない想い人の頑固さに、嗜虐心が煽られた。
手に入れるにはどうしたらいい。
金や、権威や、見かけになびく人ではない。そういう人ではないからこそ、欲しいと思うのだ。
こうして一時、身体はじぶんのものに出来ても、心ばかりはそうはならない。
どうすれば私を見てくれる。
どうすれば―――
L'Oiseau bleu 1.
〜Side 暁臣〜