アオイトリ
□アオイトリW〜眠る檻〜
2ページ/13ページ
……やっぱり戻って来るんじゃなかった…。
「茅乃はまだ嫁にいかんのか? はよう子ども産まんと、もう若くないしな〜!」
酔っ払った赤ら顔の親戚に殺意が沸き起こる。
余計なお世話だ。
年末年始久しぶりに実家に戻ったのは良いけれど、挨拶回りの親戚も集まっていて、宴会になっている事を予想してしかるべきだった。
会う人会う人に、結婚はまだかと訊かれ、うっとおしいの何の。
家族は結婚手前まで行った彼と破局したのを知っているから、あまり煩くは言わないんだけど。
とっととアパートに帰ろう、と思うものの、酔っ払いどもは私を離してくれない。
今ここにいる未婚の娘が私一人なので集中攻撃。
繰り返される結婚まだか、紹介してやろうか。
一人寂しく寝正月してるんだった〜!
「姉ちゃん姉ちゃん、携帯鳴ってるぞ」
おぅ救いの神。
弟から置きっぱなしにしていた携帯を受け取り、相手も見ずに電話に出た。
後から思うと愚かなことを……。
「は〜いもしもし〜」
『明けましておめでとうございます、茅乃さん。いま大丈夫ですか?』
「はぅ!?」
携帯越しの低く甘い声に思考が止まる。
り、理事長…。
『茅乃さん?』
「あ、はい、おめでとうございます、今年も宜しくお願いします…?」
何故疑問形。
彼もそう思ったのかクスクス笑いながらも、宜しくお願いします、と返答。
正月からお呼びだし、て訳じゃないわよね? 確か理事長、会社の新年会あるって言ってたし…。
新年のご挨拶?
『申し訳ありません、茅乃さん、ご実家に戻られているんですよね。お忙しいですか』
「え? いえ別に…既に親類一同の宴会になってますし、私はもうアパートに帰ろうかと…」
理事長らしくなく急いだ口調を怪訝に思いながら答える。
時折雑音が入るのは車の中だからか。
『帰られてからのご予定は?』
「……ないですけど…」
じわじわイヤな予感が這い上がって、次の瞬間現実のものとなる。