アオイトリ
□アオイトリZ〜桜襲ね〜
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「ぅん……?」
自分の布団とは全然違う寝台の寝心地と、馴染んだ彼の香りに包まれているのを感じて、私はゆっくり目を覚ます。
ポフポフと自分の周囲を手探りして不在を確かめた後、そういえば私は休みだけど彼は仕事だったと気付き、安眠の邪魔をされないことを幸い、二度寝を決め込もうと目を閉じた。
「……て、いかんいかん」
慌てて起き上がる。
昨日もこんな感じでうだうだしてたら帰るタイミングを逃して、連泊することになっちゃったんだ。
いい加減、家に帰って溜ってる片付け物しなきゃ。
休みの間ずっと暁臣くんに付き合ってたら身が持たないし。
ひとが休みだと思って、彼に随分無茶をされた気だるい身体に気合いを入れて、私はベッドから抜け出た。
勝手知ったる愛人の自宅、馬鹿デカイのに中身は入っていない冷蔵庫からヨーグルトとフルーツソースを出して朝食がわり。
私が買ってきたんだけど。
スプーンをくわえつつ、自問自答。
何してるんだろうな〜、私。週末の度に彼に抱かれて、家に泊まって。
二人の関係に答えを出さず、曖昧なこの生活に馴染んでしまってる。
暁臣くんが私をそれなりに想っているのはさすがにもう、否定出来ないけど、だからって、どうなの?
決定的な言葉を言わない彼に、私も何も言えない。
といって、好きだと言われて私も好きだと返すには、こんがらがってしまっているこの関係。
大体ねえ、最初が最初なのよ!
仮にも自分のところの雇人を強引にヤっちゃうか?
その後も、脅しで、強要だし。
……あの時、暁臣くんの要求に従わなくても、たぶん彼は何もしなかったんじゃないかな、とは思う。
一気に首を切るんじゃなくて、じわじわ長く絞めるタイプだし。
藤岡くんの弱味を握っておいて、後々効果的な場面で利用する、一番それがしっくりくるもの。
半年も付き合ってればそれくらいのひとでなしだって分かってる。
……そういうのが分かってて、一緒にいるんだから、まぁ、認めよう。
私が彼を好きなこと。
だけどなぁ……、
どうしてか、伝えることを躊躇してしまう。
ここまで来たら、あっちから言わせたいってのもあるし。
言わせた後、自分がどうするか決めかねていることも、ある。
どうしたいの?
どうなりたいんだろう、私は。