宝物

□君の想いが確かでも
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深く激しく、幾度と無く互いを求め、貪って。
でも足りない。
まだ足りない。
もっと、もっと、君の全てを奪い尽くしてしまうまで─────


『君の想いが確かでも』


いつものようにココの家を訪ねたトリコ。
けれどココの様子がいつもと違っていた。
常ならばにこやかに出迎えてくれるココが無表情で此方を一瞥しただけで顔を背けてしまったのだ。

「ココ…?」

何か怒らせるような事をしたのだろうか?
心当たりはあるようで無い。
歩み寄って肩に手を掛けて此方を無理矢理振り向かせてみた。

「なあ、オレ何かしたか?」
「…トリコ、この前サニーと二人で出掛けただろ?」
「え?ああ…買い物に付き合えって連れ出されたけど…もしかしてソレ?」

いや、まさか。そんなふうに思いながらもこの状況ではそう問わずにはいられなかった。

「そうだよ。サニーと二人きりで出掛けたなんて…許せないな」
「ちょっと買い物に付き合っただけだろ…?」

ココの言葉にトリコの声が小さくなる。
目が本気で許せないと言っている。

「トリコ、キミはボクのモノなのに…」

ココの手がトリコの頬に伸びてきて、一瞬その瞳が悲し気に揺れたから逃げられなかった。
ココの口付けから。
啄むような優しい口付けはすぐ舌の絡む濃厚なものへと代わり、ココの瞳が欲望に染まった。
その場に押し倒され身体の全てを暴かれて、乱されて。
喘ぐ声すらココに飲み込まれてゆく。

気を失っていたのか、目を覚ますと辺りはすっかり暗くなっていた。

「ココ…?」

近くにココの気配を感じなくてその名を呟いたトリコ。
気怠い身体を起こしてココの姿を探した。
不意にゾッとした。
黙って居なくなるのが初めてでは無いから。
前回はそれがきっかけで自分のココに対する気持ちを自覚した。
何とか探し出して、二度と黙って居なくならないと約束させたのに、また黙って消えたのだろうかと。
つ…と涙が零れ、頬を伝った。

「ココ…っ!」
「何だい?」

ギッと金具の軋む音をさせながら玄関のドアが開かれて大きな荷物を背負ったココが入ってきた。

「予定より買い物に時間が掛かってね、ホントはキミが起きる前に戻るつもりだったんだけど…ごめんね、不安にさせて」

ココはドサリと荷物を置くとトリコに歩み寄って、指の背でトリコの頬に伝う涙を掬ってやった。

「約束したからね、もう黙って居なくならないって…」

自分よりかは小柄な体をギュウギュウと抱き締めるトリコの頬をココは優しく撫でた。

「でももしまた黙って他の誰かと出掛けたりしたらどうなるかわからないよ?」
「どんだけ嫉妬深いんだよ…」
「今更だろう?本当は小松くんとコンビを組んでる事だって許せないくらいなんだよ」

互いの額をくっつけて見つめ合いながら告げられる言葉に躊躇うトリコ。

「オレが好きなのはココだけだ…」
「知ってるよ?でも嫌なんだ。キミが他の誰かと居る事が」
「何か…そのうち軟禁されそうだな…」
「ふふ、キミがそれを許してくれるなら今すぐにでもそうしたいね」

笑ってはいるが、目が本気だ。
本気でトリコを軟禁したいと思っている。

「ダメだ…」
「わかってるよ…だからせめてキミがボクのモノだっていう証を残させて」

そう言ってココはトリコに口付けた。
身体の至る所に紅い華を散らしていく為に。

キミの想いが確かでも、ボクは嫉妬せずにはいられない。






END

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