ゾロ×
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今日は良く飲んだ。
相手はザルだ、とことん付き合えば足腰立たなくなるのは分かりきった事だったが、今日はなんだか、そんな気分だった。
誕生日の前夜に二人きり。
そんなラッキーな状況に思いの外浮かれていたのだと思う。
『ょっ…と』
『あ…?』
気づくと背中にボフンっと柔らかい弾力。
天井には薄明かり。ぐるぐると廻って見える。
『ここ…どこだ…』
見慣れない天井は船じゃない。
見回せばどうやらここは宿のベッドで、俺は担いで運んでもらったらしかった。
『あー…』
くらりと目が廻り思わずまた目を閉じる。
(俺、何してたんだっけ…)
『コック、ここに荷物置くぞ』
部屋の入口の方からゾロの声と、がさっと紙袋を置くような音がする。
(あァそうか、今日はゾロを買い出しに付き合わせたんだ。
それで荷物運びのご褒美に酒をおごって、乾杯して、それで…それで…あれ…?)
そんな事をぼんやり思いながら目を開けると、ゾロが近づいて来るのが分かった。
『おい』
大きな手が、包み込むように俺の頬に触れる。
『…ゾロ』
その手は頬をするりと撫でながら、親指で下唇の輪郭をゆっくりなぞっていく。
『おい…平気か?
ぶっ倒れやがって…大体てめェが…』
(あー…なんか言ってるけど分かんねー…)
分かるのは、やんわり冷たいゾロの指先が気持ち良いって事だけ。
俺はゾロの手のひらにスリと頬擦りして、開いた目をまた閉じた。
『、オイしっかり…』
酔っているからだろう、遠く響くゾロの声。どこか呆れたような声色だ。
でもその声は少し心配そうにも聞こえて、耳に柔らかく、くすぐったく沁みていく。
ほんのり幸せを感じて、俺は嬉しくなった。
『…へへへ』
『何が可笑しいんだか。ったく…、調子づいて飲むからだ』
『ハハ、飲み直そうぜマリモマン』
『………お前なァ…』
ほとんどため息のような返答にまた可笑しさが込み上げて、クックッと笑いを漏らすと、もう一度、今度は本物のため息が聞こえて来た。
『この酔っ払いが…』
『ハ、そら酔うさ、あんだけ飲みゃァ、さ…』
『、おい』
手を伸ばしてゾロの襟元を掴み引き寄せる。
そのまま唇を合わせて舌を差し入れると、戸惑うような弱い反応のゾロの舌を捕まえた。
『んん、…』
見た目に似つかわしくない柔らかな舌。
ゆっくり味わうように舌で撫でると、脳ミソは酔いと混ざってフワリフワリと綿菓子みたいに溶けた。
(あれ?)
なのに目を開くと眉間にシワを寄せたゾロの顔。
『、おい、やめろ』
『、なんで?』
『なんでって…』
やんわり押し戻されて問うと、ゾロの眉間のシワが困ったように深くなった。
『…こんなぐでんぐでんの酔っ払いはもう水飲んで寝ろ』
『んだよ、いいよ』
『…明日も準備早ェんだろ。
それに、俺の強ェ酒に付き合って飲んだからこんな』
『は…?』
(…つまりヤだって言うより俺、心配されてんのか?…マリモに?)
思わず吹き出してしまった。
『ブっ!アハハハハ!ま、マリモがいっちょ前に人間らしい気遣いかよ!アハハハハ気持ちワリー!アハハハハ!』
『ってめ、俺ァなァ…!』
ゾロがムッとした顔で文句を言おうと開いた口をパッと手のひらで覆う。
『んむ…』
『あー、あーハラいて…。
心配すんな大丈夫さ。
してェ、の。俺が』
『…っ』
顔を近づけて言うと、ゾロの眉間がピクリと動いた。
『なァ…』
口を覆った手の甲にチュ…と軽く音を立ててキスをする。
『直接、してェんだけど』
『っ……ダメだ』
(お、まだ我慢してら)
『フフ』
にやけてしまう。
あの傍若無人のゾロが俺のために気遣いとは。
しかもキスすら我慢とは。
(なんかコイツ…可愛いなァ)
何だか急にこのマリモがいじらしく見えてきた俺は、塞いでいた手を滑らせゾロの頬に触れた。
『冷てェほっぺだなァ』
『っ、そりゃてめェが酔っ払って火照ってるからだろ…早く寝』
『ふーん…』
『、撫でるな…酔っ払い』
『冷たくて気持ちイイ』
『…っ』
頬を包むようにしていた手を返し、指の背で撫でる。
そのまま首筋まで指の背で辿ると、またゾロの眉間がピクリと動いた。
『ハハ、困ってやんの。…ダメ?』
『…』
『大丈夫だって』
『…』
『ほら』
『…っ』
『もうこんなじゃねェの。我慢しねェで、さ』
『〜…っ』
ゾロのズボンを押し上げる膨らみにもう片方の手を置き、緩く、ゆっくり撫でるように握ると、素直なソコは主の意に反して更に硬さを増したようだった。
『…しようぜ、なァ』