ゾロ×
□秋日和
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たとえば
皿を洗う水の冷たさだったり
朝、自然と厚手のジャケットを選ぶ手だったり
ガラスの器の出番はなくなり、いつの間にか耐熱皿がテーブルの主役になっていたり
何も自然だけじゃない。
こんな日常の中でも、日々移り行く季節を知る。
『もう、11月だもんな…』
そう呟くサンジは今、ゾロの腕の中にいた。
『ん…何か、言ったか…?』
『いや…寝てろよ…』
眠っていたらしく掠れた声を出したゾロに小さく返事をしながら、サンジは腕枕に頬を乗せ直した。
昨日、ゾロは誕生日を迎えた。
その宴に使った食料は半端なく。
空っぽの食料庫に有難いタイミングで島に着いたので、今日は買い出しがてら、久しぶりに陸での宿泊となっていた。
当たり前のように同室を割り振ったナミさん。
いつもなら何で何でと突っ掛かる所だが、今日は素直に感謝したい。
一味の宴は丸一日かけてのドンチャン騒ぎ…二人の時間は、はっきり言って少なすぎた。
『あったけェ、な…』
サンジはまた一人言をつぶやく。
ゾロは今度は目を開けなかった。
暖かさを感じるベッド。
絡む素足の心地よさ。
裸で抱き合うのに、今の季節が一番いい。
昔から涼しい秋の気候を好んでいたが、ゾロとこうして抱き合い眠るようになって、更にこの季節を好きになった。
今、目の前で寝息を立てている、この剣士が生まれた秋の季節を。
さっきまで肌を湿らせた汗もすぐに引き、サラリと乾いた温かい腕枕に頬擦りする。
淡くゾロの匂いがする。
暖かい匂いだ。
額に掛かる前髪がゾロの規則正しい吐息に揺れているのも、夏には鬱陶しいと思ったものだが、秋になれば温もりを感じられて悪くない。
身動ぎすれば柔らかく素肌を撫でる、毛足の長い毛布。
ぬくみ加減が、とても心地いい。
ついこの間まで暑い夏だと思っていたのに。
『いつの間にか、こんなに秋になってたんだなァ…』