ウソップ×
□星を掴む
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【星を掴む】
『見つけた。ここにいたかウソップ』
ウソップ工場からメインマストのふもとへ出る梯子を上がり、ぴょこっと顔を出したサンジは、ロビンの花壇の前に腰をおろして空を見上げているウソップを発見し、嬉しそうに笑った。
『探したぜ?…うぉッさみィなここ』
『あァ…サンジ…ここは酔い醒ましにちょー…どいいんだ〜…』
ウソップの顔は真っ赤で、ろれつも回っているのか危うい所だ。
『あァあァ、テメェは強くもねェのに…また調子ん乗ってこんな呑みやがって…』
そう愚痴るサンジの表情は優しい。
今日は大晦日。
このサニー号の上でも新年を陽気に迎えようと、賑やかな宴が催されていた。
サンジは酒や料理の給仕に奔走していたが、目の廻るような忙しさがようやく落ち着いてきた頃、ウソップの姿が見えない事に気が付いた。
もうじき年が明ける。
どうせ新年を迎えるなら恋人の傍で、と思ったサンジはウソップを探して回り、今ようやくここで捕まえたのだった。
『ほォら〜…サンジも隣、座れ〜ッ!!ぎゃははは!!』
『酔っ払い…指図されなくてもそのつもりなんだよ』
どうやらロマンチックには程遠い年越しになりそうだ。
別に長ッパナにそんなものは求めちゃいねェが、とサンジは苦笑いしながらウソップの隣に腰を下ろした。
『あァ、何見てんのかと思ったら…星がすげェんだな…』
ウソップと同じように空を見上げたサンジは感嘆の声を上げた。
ここは冬島の気候に安定した海域。
凍てついた空気が頬を刺すように冷たい。
だが空は晴れ渡り、その一面を埋め尽くすかのように、幾千もの星が瞬いていた。
『サンジ、な、な、綺麗〜だろ?綺麗だよなぁ〜』
『あァ、そうだな』
この冬特有の澄んだ空気のおかげか。
今にも吸い込まれそうに広がる今夜の星空は、特別に綺麗だ。
サンジはふと生まれ故郷の北の海を思い出した。
そうだ、北の海も…俺の故郷も、空気が澄んでいて夜の空が綺麗だった。
『あぁぁ…村を思い出すぜぇ…』
同時にウソップが郷愁を帯びた声でそう言ったので、サンジは思わず笑った。
『お前もか』
『あ?サンジも?』
『あァ、北の海も夜空は綺麗だ』
『そっかぁ〜…俺の村も、そりゃァきっれぇーなんだぜぇ?
満天の星空ってーの?星が今にも降って来そうな空でさぁ…小っせェ頃から夜に家を抜け出してよ、悪さ仲間と星を眺めたもんだった……』
酒に酔ったウソップは更に饒舌になって喋り続ける。
こんな時、サンジはいつもうん、うんと只相づちを打つ役だ。
優しい笑みで聞き役に徹する。
苦にもならない。
ウソップがくるくる表情を変えながら話すのを見るのが楽しいからだ。
『…でさ、その星空があんまり綺麗でよ、今にも手が届きそうなもんだから…
仲間に「大きくなったらあの星を捕ってくる」とか言ってたっけな』
『ハハ…小せェ頃からホラ吹きか』
『あッあっバッカちげェよ!あの頃はホントに手が届くと思ってたんだよ!』
真っ赤になって手をブンブン振る仕草があんまり一生懸命で、サンジはクスクス笑ってその手を握った。
『分かった分かった、ホラじゃねェのな。お前は夢ある少年だったんだな』
『そうだぜ、夢ある少年ウソップ様だったんだ!夢なら今でも!』
『あァ、今でもお前は夢に生きる男ウソップ、だもんな』
サンジが握った手に軽くキスしながら言うと、ウソップは赤くなりながらも顔を少し伏せた。
『……はは、でも…』
『…?』