ゾロ×

□心臓はかく語りき
2ページ/7ページ



3日前。


『なァ』


仕込み中のコックが俺に言った。


『俺…ゾロに惚れちまったみてェ…』


夜のキッチン。


俺は晩酌中。


唐突なコックの告白に、口にしかけてたつまみを落としてしまった。


『今…何つった…?』


『…ゾロに惚れちまった…って言った』


コックは俺に背中を向けたまま、仕込みの手を休めず、そう言った。


『……コック』


『あァ、言うな、わかってんだ。てめェが何とも思ってねェのは…。』


『…』


『言っただけだ。見返りが欲しかった訳じゃねェ…。
…受け流してくれればいい』


コックの表情は読めない。


口調はいつものようだが、落ち着いた、静かな声だった。


『おし、終了』


仕込みを終えたらしいコックは手を洗うと、前掛けで拭きながら、振り返った。


『晩酌終わったら、皿とグラスは流しに入れといてな』


何も無かったように、出て行った。


俺は何も言えず、その場に置いて行かれたように佇むしかなかった。




…何だよ…。



訳わかんねェよ…。



俺は、残った酒を一気に煽った。




 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ