ゾロ×
□心臓はかく語りき
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3日前。
『なァ』
仕込み中のコックが俺に言った。
『俺…ゾロに惚れちまったみてェ…』
夜のキッチン。
俺は晩酌中。
唐突なコックの告白に、口にしかけてたつまみを落としてしまった。
『今…何つった…?』
『…ゾロに惚れちまった…って言った』
コックは俺に背中を向けたまま、仕込みの手を休めず、そう言った。
『……コック』
『あァ、言うな、わかってんだ。てめェが何とも思ってねェのは…。』
『…』
『言っただけだ。見返りが欲しかった訳じゃねェ…。
…受け流してくれればいい』
コックの表情は読めない。
口調はいつものようだが、落ち着いた、静かな声だった。
『おし、終了』
仕込みを終えたらしいコックは手を洗うと、前掛けで拭きながら、振り返った。
『晩酌終わったら、皿とグラスは流しに入れといてな』
何も無かったように、出て行った。
俺は何も言えず、その場に置いて行かれたように佇むしかなかった。
…何だよ…。
訳わかんねェよ…。
俺は、残った酒を一気に煽った。