エース×
□途切れる想い(★)
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『よォ、また邪魔するよ』
『エース!』
サンジの明るい笑顔にエースも微笑む。
エースはルフィと再会後、メリーにたびたびやって来ては食事を共にするようになっていた。
夜、サンジが明日の仕込み中に突然キッチンにやって来ては、一杯飲んでいく事も最近では珍しい事ではなくなっていた。
気さくで陽気な人柄と、一つしか違わない割に落ち着いた雰囲気を合わせ持つ。
そんなエースを、サンジは気に入っていた。
兄のように包み込んでくれるエースを。
『つまみ作るから、待ってて』
『あァ、ありがとう』
だが、この日のエースはいつもと少し違っていた。
ルフィに良く似た屈託ない笑顔がない。
小さく微笑みはするが、いつもの陽気さは影を潜めていた。
黒ひげにたどり着くはずの情報も、ここの所ガセばかり掴まされてるって言ってたっけ。
疲れているのかもしれね
ェな…。
そう思ったサンジはエースに優しい声を掛けた。
『疲れてんの?今クソうめェやつ作ってるから、それ食って元気だせよ。』
『優しいね…サンジは』
エースの言葉にニッと笑って作業に戻るサンジ。
あァ…やべェな、俺。
エースは心の中で舌打ちした。
お前が欲しい。
隠して来たはずの黒い感情が溢れてきて。
液体の表面張力のように、器から溢れそうなのを、ギリギリで耐えてるような…。
危うい所で留まっている。
先に出されていた、グラスの酒を一気に飲み干した。
『ゆっくり飲めよ。胃に悪いぜ?』
出来たてのつまみを並べながら、サンジが言った。
『やっぱ上手く行ってねェのか?黒ひげ…』
『…あァ、…ま、その話は辞めようぜ。酒が不味くなる』
優しいサンジ…俺の様子を心配してくれんの?
いつもなら、嬉しい筈なのに。
今日はどうしてだろう。
…イライラする。
あんまり優しいサンジに。
まるで俺を警戒していねェサンジに。