エース×

□伝わる想い
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エース…?!





振り返ると、そこに居たのは…ゾロだった。



『…酒、もらってくぜ』



『…あァ…』



ゾロか…。





何か胸に違和感を覚えて、心の中で首を傾げた。





『…ほら、持ってけ』



棚からワインを出してゾロに渡した。



『てめェ最近、どうした』



ゾロがワインを受け取りながら、言った。



『え…』



『覇気がねェっつうか。…ため息ばっかついてよ』



ゾロが、俺の心配…?



『てめェが心配たァ、珍しいな』



『…ナミも、すげェ心配してるぜ』



『あァ…』



それでか…。



『ナミさんにも言っといてくれ。俺は大丈夫だってな』



『あァ』



グラスを2つ、ゾロに渡した。






…何なんだ、この違和感…。






あァ…そうか。




俺、普通に受け答えしてる…。




前の俺なら、ゾロがキッチンに来ただけで嬉しくて。





ゾロの口からナミさんの名前が出れば、悲しくて苦しくて。




ゾロの動作に、一喜一憂してたのに。




…今は、普通に話が出来る。




…あァやっぱり


やっぱりあの日ゾロへの想いは、崩れちまったんだ…。




でも…やっと俺、忘れられる…。




少しだけ、胸が安堵と失恋の想いに優しく痛んだ。




『…エース、来なくなったからか?』



『えッ?!』



突然出たエースの名前にドキッとして、思いがけずデカイ声が出ちまった。



『…また来るといいな』



ゾロは勝手にため息の原因をエースと解釈して、そう言うとキッチンから出ていった。





『…』





エース…





…実はあの日から、俺はずっと思い出していた。




エースの優しく…熱い手を。




まるで、想いが染み渡るような。




熱い唇を、指先を。






とろけるような、とびきり甘ェ…あの腕の中を。






 
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