「えっとね、じゃあこの学校について色々教えてあげる!」





そう言ってにっこりと笑ったのは、前の席に座っている女の子。彼女の名前は珊瑚って言って、すぐあたしに話しかけてくれた。少し話していると、あ、と思い出したように話を切り替える。





「この学校のこと?」
「うん。この学校のことっていうか、あいつらのことなんだけど。」





あいつら、と言いながら珊瑚が向いた方向に視線をやるとそこには寝ている赤と銀。仁王くんはテニス部だから、あの赤髪くんもテニス部ってことなのかな…。美形だし。基準がおかしいような気もするけれど、どこの学校のテニス部も大体みんなかっこよかった。そのことはあたしの人生で出会った中での疑問で五本の指には入るだろう。





「男子テニス部にはファンクラブってのがあるから気を付けてね。マネージャーになりたいとか思うならいじめられる覚悟がないと。」
「いじめられる覚悟、ねー…。」





ふっ、と懐かしさに無意識に笑いがこぼれた。あの頃は覚悟なんてなくて、ただテニスが好きで、何も考えずに入部していた。
そんなことを考えていたら、珊瑚は不機嫌そうに、でもどこか愉しそうに笑った。





「ほんっと、こいつらの何処がそんなにいいんだか。顔だけ良ければそれで全ていいのかーって感じ!」





がんっ、と珊瑚が丸井くんの机の足を蹴る。
おお、足ながっ!ほそ!





「〜っいってえ!霧夕お前、何しやがる!」
「べっつにーなんにもしてないけどー?」
「なあにいがなんにもしてないだ!しらばっくれんな!あ、宮地!こいつだろぃ俺の安眠妨げたの!」
「えっ」




うわ、いきなり振られたからびっくりするじゃんよ。ああ、というか…





「ま、丸井くん?どちらかというと後ろを…」
「ん?なにが…ぐえっ」
「………ぶんちゃーん、俺の安眠を妨げたのはどこのどいつじゃろう…?」





あらー、丸井くんが勢いあまって立ったせいで椅子が後ろの席にぶつかってたみたい。
仁王くんは笑ってるけど見事に目が笑ってない。寝起きの仁王くんはこわいよー…くわばらくわばら





「ごほっごほっ…っいてえ」
「自業自得ね!」
「おーまーえーなーっ!」
「ああ、それにしても酷いのう霧夕。俺らが顔だけじゃって?」





仁王くん、寝てたんじゃないんですかあなた…。





「あながち間違ってはないでしょ?顔も良くて性格もいいなんてそんなの柳生くんくらい…」
「失礼。仁王くんはおられますか?」
「あ、噂をすれば」





柳生、くん。
そう呼ばれた男の子に視線を向けると、いかにも優等生って感じの眼鏡をかけた人がいた。そしてやっぱりテニス部はイケメン伝説は続きそうです。





「仁王くん、少しお話が……おや?」
「なんじゃ柳生。…ああ、こいつは転入生じゃ。」
「………そうですか。いえ、ただ見慣れない方がいると思いまして。」
「あ、はじめまして!宮地です。よろしくお願いします。」




こちらこそ、とあたしに微笑む柳生くんと目が合い、少しどきりとした。物腰は柔らかくてまるで紳士の様。でも、眼鏡に隠れるその瞳は鋭く涼しげで、まるで仁王くんのような―――





「やーぎゅ、それで?俺に話ってなんじゃ。」
「…人がいると少し話ずらい内容なので、また後の休み時間に参ります。では失礼。」





そう言って柳生くんは教室を出ていった。





「なんだあいつ。どうせさっきの時間にきても呼び出す時間なんて無かったんじゃね?」
「ね、何の話だろ?…あ、なーに桃子。あんたもしかして柳生くんに一目惚れしちゃった?」





柳生くんが出ていった方向を見つめていたら、珊瑚がにやにやしながら言ってきた。





「ええっ、いやそんなんじゃなくて!」
「じゃあ何よー、そんなに熱い視線で見つめちゃってー」
「いや、ただ…」
「ただ?」





柳生くんを“はじめて”みたときから違和感、っていうか、胸のもやもや感があたしの中に存在していた。





「あたし、柳生くんに会ったことある気がする――。」







謎解きのKey
(……………)
(顔は初めて見たと思うのになー…)

(真実に気付くまであと少し)











ひっさびさの更新ごめんなさい!!!!!
20万のもしてないしほんとに申し訳ない(´;ω;`)
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夜桜


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