短編五

□「紅蓮の劫火」
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腕は手錠で縛られて、足は枷が嵌めてある。逃げられないように。

あの男との初夜を。

「・・・何で」

目覚めたのは昼だった。
暖かい布団の中で。広い室内で、ルフィは起きた。夢かと思った。
敵国との戦に破れ、城は落ち、国は滅んだはず。自分は死のうとあの男に首を差し出したはず。はっと体を起こしたとき、目に映ったのは敵国の紋章を飾った障子。

ルフィは悲鳴をあげて逃げようとしたが、一気に障子が開いた。
数人の女達に囲まれ、強引に口を開かせられ、薬を飲まされた。それは神経を麻痺させるもので、ルフィは体を動かすことも、喋ることもできず。人形のようになってしまった。
そして、用意された純白の花嫁衣装を着せられた。ルフィに待っていたのは予想もつかない、儀式だった。
婚礼の儀式。敵国の君主、エースの妻として。動けず、喋れないルフィはただただ、時が過ぎるのを待つしかできなかった。

布団の上で、ぐったりと横になるルフィは身動きがとれない。ここで、あの男がやってくれば。間違いなく犯される。

助けて、と声をあげても誰も来ない。
傍に侍女が控えているはずなのに。すると、がっと勢いよく障子が開く。同じ色の寝着を着たこの城の主。

「ルフィ・・」

「くっ・・」

「なげぇ式も終わったことだ。夜を楽しもうぜ」

「やだ・・ふざけんなっお前何考えてんだよ!敵国の娘だった俺を・・側室にするなんて!!意味ねぇだろっ首をとればいいだけだろっ」

「側室?」

エースは首を傾げる。
吠えるルフィにくすりと笑い、布団に近づき彼女の胸ぐらを掴んで強引に押さえつけた。

「誰が側室って言ったんだ・・?」

「・・じゃあ、妾以下か。奴隷以下か」

「・・・はははっ!!」

エースは高笑う。
途端に呆然と驚くルフィに獣のごとく食いついた。
寝着がびりびりに破かれ、一気に素肌が晒される。豊満な、誰も触れた事のない膨らみを大きな手が掴むとルフィは悲鳴をあげる。
そのままエースは縛られたルフィの手錠を鍵で外し、這い回る彼女の手を力づくで押さえつけた。

情け容赦ない、強引過ぎる男の力にルフィは涙する。
恐い。何て恐い男。いずれ父が決めた婿養子と婚姻を結んで夜を過ごすはずだったのに。
一族を滅ぼし国を燃やした男の手に、犯されようとしている。
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