短編五

□「紅蓮の劫火」
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「誰かいるんだろっ・・そこにいるんだろぉ!!・・頼むからこいつを止めてくれぇぇ!!」

部屋の外に、侍女達が控えているはず。
ルフィは助けを乞うも、届くことはない。エースは美しい裸体に目を細めて、唇で所々に吸い付き痕を残す。

とうとう足を開かされたとき、ルフィは死を覚悟した気持ちになった。
力づくで挿入され、激痛に辛苦に顔を歪めて泣いた。
寝床から聞こえる、少女の悲痛な声に侍女達は目を閉じて過ぎるのを待つ。
やがて声が息づかいしか聞こえなくなり、少女の声は擦れて、暗闇と共に消えていった。

「ルフィ・・お前は俺の宝だ・・俺の、俺だけの宝・・」

嵐の情事が終えた後に、気絶したルフィをエースは抱きしめて、熱を込めて言う。
やっと自分のものになった姫。ずっと、ずっと慕っていた愛おしい人。
エースは彼女の額に口づけて、眠りについた。



彼は、自分に何を求めているのか。

ルフィは一人、貝合わせをしてつまらない時を過ごしていた。
エースの妻となって早ひと月。庭に咲いていた桜の花は既に散って葉がついている。
城主の妻達が住まうこの奥の院の中で、最も隔離されたこの部屋には限りある者しか入れない。この城は敵国のもので、自分は城主エースの妻の一人。


「帰りたい・・」

ぽつりと漏らす。
もう何度も思い、腐る程言った。愛しい故郷。大好きだった家族や仲間達。
彼らはいない。死んでしまった。
いっそ、あのとき。エースに刃を向けたとき。自分で首を切っていれば。
皆と一緒に逝けたのに。

涙が流れる。
貝合わせを辞めて、ルフィは部屋の隅で座った。外で控える侍女達は自分に話しかけてはくれないし、見張っているので出られはしない。
ルフィに声をかけるのは、エースだけだ。

障子が開くと、彼が現れる。

「あ・・・」

「よぉ、ルフィ。会いたかったぜ」

強ばる彼女と違って、彼は上機嫌だ。
エースは、彼女を妻にしてから頻繁にここへ通っていた。彼の話だと、妻はルフィを含めて九人。子供はいない。
世は一夫多妻制とはいえ、彼女は一人っ子で、父も祖父も妻を一人しか娶らなかった。それを身近で見ていたルフィはエースをこの女好きと心の中で悪態をつき、そんな男の妻になってしまった自分を嫌悪した。

ルフィは決してエースに心許そうなど思わなかった。
どこか懐かしみを感じるが、自国を滅ぼした者。体は奪われても、心は渡さない。しかし、冷たい態度をとってもエースは自分から話だし、一方的に続ける。

「他の妻達のとこへ行けよ。俺に構わないでくれ」

「妬いているのかぁ?ルフィ」

「違う・・」

否定しても、エースは聞かない。彼女を胸におさめて、抱きしめる。
大事に、大事に。強く。

「ルフィ・・愛してる」

たった一ヶ月過ごしただけで、愛してると言うな。
ルフィは顔を顰める。すると、廊下に控える侍女の声に彼は反応し、名残惜しそうに彼女を離す。

「じゃあ、俺は仕事に戻る・・・夜にな」

「!!・・今夜も?」
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