短編五
□「火の花嫁」
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孤児はほっとして、足に縋り付いた。
「うわっ何だよガキ!離せ!俺は人間が大嫌いなんだっ」
「に、人間って・・お前が悪魔か!?」
孤児は驚く。青年は返さない。黙った事は肯定の意味。
孤児は青年の足を離して、土下座する。
「や、やだっ食べないでくれ!俺を食べても美味くないよぉ!!」
「食べるって・・人間なんか食っても美味くねぇよ」
「だって・・あいつら、悪魔に食べさせるって言うから・・」
「食べさせ・・あぁ、なるほど」
青年は納得し、汚い風貌の孤児を見下ろす。
昨日に暇つぶしで数百年ぶりに村に降りて、力を使ってしまった。恐らく昔の言い伝えが残り、住処を知られたのだ。村に災いが起きぬよう、生贄を。
しかし随分と動きが早いものだ。そして汚い子供を見れば用意に察する。青年は全ての人間を嘲笑したと同時に、怒りがわいた。
舐められたものだ。
勝手に厄介者を生贄として差し出し、もう村に関わるなと。
村にとって都合がいい話。青年は子供を一瞥し、どうしたものかと考えた。
「俺さ、人間食わねぇぞ。お前、汚ぇし、醜いし。腹が壊れる」
「・・・知ってる」
「希望があれば言ってみな。焼いて殺されるか、蒸されて殺されるか、ずたずたに切り裂かれるか、埋めるのは面倒臭ぇから勘弁な」
「・・・うぅっ・」
子供は泣く。地面に雫がぽたぽたと落ちていく。
これから死ぬ事実に、恐怖と哀しみに襲われる。青年は手の骨を鳴らして、子供に与えたリクエストを待つ。不意に、想った。
生贄ということは、生娘が定番だ。
「お前、女か?」
「うん・・」
「へぇ〜〜・・ガキに対して趣味はねぇけど。一度ヤってみたかったんだよな」
「・・え?」
青年は企むと、子供の汚い服を掴み上げて洞窟の奥へ進んで行った。
奥は、一言で表せば美しかった。村長よりも立派なお屋敷で、緑溢れる木々や静かな川のせせらぎ。動物も穏やかに鳴いている。更に洞窟内というのに、空が存在していた。とても洞窟の中とは思えない、魔法の空間。
青年は川に近づくと、子供を放り投げた。
突然の動きに、子供は慌ててもがいて陸に起き上がる。
「ぷはっ!!」
飲んでしまった水を吐き出し、子供は乱れる呼吸を整える。
水で濡れた髪を掻きあげて、覗き込む青年を見上げた。
「・・・ん?」
青年は、見開く。覗き込むどころか、子供の顔を凝視した。
「お前・・・可愛いな」
「ほぇ?」