短編参

□「乙女の気持ち」
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スリル満点の校舎はホラー映画を思い出す。
明かりは、幸い。消火機が目印の光があった。
教室に走って、あたしはお菓子の入った袋を見つけた。
そのときだった。懐中電灯の明かりが見えたの。
あたしは慌てたわ。見回りの先生に怒られちゃうって、怖くなった。
明かりが見えなくなって、あたしはすぐに教室を出た。けど、昇降口に誰かいるのを見つけてまた隠れた。

すぐに終わると思っていたのに、予定よりかなり遅れている。
お兄ちゃん達、きっと心配してる。
あたしは不安になる。何で、お兄ちゃん達に言わなかったんだろう。

悔やんで悔やんで、怖くなる。
このまま、外に出れなくなったらどうしようって。

「アニー」

小声であたしの耳に囁いたのは、スティーブだった。

「スティ・・・ブ?」

「世話のかかるお嬢ちゃんだな。ほら、行こうぜ」

びっっくりしたわ。

いつのまに後ろにいたの?
あたしが、何で学校に戻ったってことがわかったの?
ここに隠れてるって、見つけることができたの?

あたしは驚いて、言葉が出なかった。
同時に、安堵に涙が溢れた。

「おいおい、兄妹揃って泣き虫だな」

スティーブは、あたしの頭を撫でて肩に押し付けた。
彼の服はあたしの涙が染み付いた。

「ダレンが反対側にいるんだ。中央の廊下に行こう。警備が手薄の脱出口がある」

「うん・・・」

スティーブが、あたしの手を引っ張った。
ぎゅっと強く繋がれて、思わず胸が高鳴った。
彼の背中が、いつもより大きく見えたの。
早歩きで進んで、お兄ちゃんと合流した。お兄ちゃんも、泣きそうな顔をしてた。

「アニーっ全く、心配させて!」

「ご、ごめんなさい」

お兄ちゃんが抱きついてくる。

「おい、ダレン。続きは校舎を出てからにしようぜ」

スティーブがあたしとお兄ちゃんに言うと、急いで外へ出た。

「ごめんなさい。お兄ちゃん、スティーブ」

「アニー・・・僕、本当に心配したんだからな」

「だって、お菓子置いてきちゃったから」

「言えば僕のをわけてあげたのに!」

お兄ちゃんは優しいの。
あたしはぐずって泣いた。きっと、顔はぐしゃぐしゃ。全然可愛くない。
しかも、満月が明るくてあたしの泣き顔は二人に見えている。
お兄ちゃんは、肩を震わせてた。怒ってる。何も言わずにいなくなったあたしを、叱ろうとしている。
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