短編五

□「焔呪」
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【ジャンル】現代パロ シリアス
【傾向】ヤンデレ 無理矢理 グロ
【R度】18


真っ暗な暗闇に、自分はいた。
光を求めて彷徨い、必死に出口を探す。けど、何も見つからない。
恐くて堪らなくて、でも諦める訳にはいかなくて。
何でここにいるのか考えていると。背後から熱気を感じ取った。
火だ。火が押し寄せる。逃げようと懸命に走り出すも、火が蛇のように足に縛りつく。
まるで逃がさないと言うように、縛りつける・・・。




【焔呪】




また、あの夢だ。
温かなベッドの中で、モンキー・D・ルフィは思った。
夢の中で、ルフィは暗闇にいる。彷徨い続けるとやがて焔が出現し、逃げぬよう束縛する。同じ夢を、近年何度も見た。

(ま、夢だけど・・)

大きく欠伸を漏らして、ベッドから降りる。
部屋はシンプルな家具しか置かれておらず、年頃の女子の室内とは思えないくらいに飾り気がない。しかも少々、いや。かなり散らかっている。
これを友人が訪れたら「汚っ!」の一言だ。週に一度、祖父が寄越す家政婦が掃除をしに来るが、自分自身で彼女は片付ける事をしない。

ルフィは一人暮らしだ。今年で十七歳の高校二年生。
家族構成は祖父のみ。祖父は警察の有力者で、多忙の責務を送っている。
寝起きでぼ〜っと歩いていると、段ボールに躓いて倒れた。
ぱっちりと目が覚めて、壁に掛けられた時計が視界に映ると、もう朝の九時だ。

(今日って仕送りの日だったな・・)

食費がかかるせいで、祖父の仕送りは毎月ギリギリ。
銀行で引き出さなければ今日の晩飯は無しだ。ルフィは腰を上げて洗面台に向かった。


季節は冬。
土曜の休みだけあって、町は家族連れやら恋人やらで賑わっている。
それにもうすぐクリスマスだ。胸を躍らせるイベントに周囲は盛り上がっていた。
麦わら帽子を被り、赤いコートに身を包んだルフィは、さむっと寒さに身を震わせる。
麦わら帽子は季節外れであるが、彼女のトレードマーク。両手で擦り合わせるも、冷たい風によって体温を奪われる。
周囲を見回せば、一人で行動しているのは自分一人だけだと気づくと、つまらない気分になった。

昨年までは、友人達とパーティの準備ではしゃいでいた。今年は運悪く、仲の良い友人達は恋人ができて、開けなくなった。
クリスマスは二日だ。一日は恋人、もう一日は家族と。よって、ルフィは余ってしまったのである。

肉親の祖父はクリスマスプレゼントを贈ってくれるが、家に帰っては来ない。
一人寂しい日を送るルフィは、はぁとため息をつく。来年も今年のようになるのかと思うと、何だか悲しくなった。

俯き加減で歩いていたせいか。

「いてっ!」

正面衝突する。
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