短編五

□「きゅ〜と・しすた〜」
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【ジャンル】コメディ
【傾向】シスコン ブラコン 突っ込み
【R度】0





マルコは胃を痛めていた。

毎度、この男のせいで日に日に弱くなる自分の胃。神経がすり減り、体重も少し減ってしまったこのごろ。
目の前にいる張本人は、テレビ局の楽屋で弁当十箱も平らげ、まだ食う勢いで、別の弁当箱に手を出す。
十一箱目に入ると、マルコと目が合い、苛立にばんっと箸を雑に置いた。

「俺は絶対に行かねぇからな!!」

「いい加減にしろよぃ、エース。これは社長から言われた直々の仕事なんだ」

「社長の頼みでも行かねぇ!国内の仕事しか俺はしねぇっ」

「はぁ・・困るよぃ、エース。どうしてそこまでして海外に行きたがらねぇんだ?」

エースと呼ばれた男は、わなわなと肩を震わせる。
あまりの反応にマルコは心配になり、おいと声をかける。エースはくわっと目を見開いてこれでもかというくらいにでかい声で言い放った。

「ルフィ会えなくなるからに決まってるだろぉっ!!」




【きゅ〜と・しすた〜】



ポートガス・D・エース。

女優ポートガス・D・ルージュの一人息子であり、モデル出身の人気芸能人。
母親似ではないが、切れ長の目と高い鼻、形のいい唇。端整でハンサムとも呼べる顔立ちと、がっちりとした体格の持ち主。

しかも頭脳明晰で、芸能活動をしながら名門の大学に通っている。スポーツも優秀で、過去に様々なスポーツ大会で優勝した記録も持つ。

以上のこと、女性ファンが多く抱かれたい芸能人の上位ランクに挙げられ、その人気は迂闊に外出できない程。

マルコはつい先月にエースのマネージャーとして配属された。
今まで、記憶力のいいエースはマネージャー不要として、一人で行動していたのだが、体が保たないとルージュの頼みで敏腕マネージャーのマルコがエースの担当になったのである。

礼儀正しくいい青年で、テレビのまんまと聞いていたマルコだったが、現実はうってかわっていた。

エースには妹がいる。
ルフィという義妹が。その子はルージュが再婚した相手の連れ子で、エースと血の繋がりのない、妹だった。

ルフィは一言で言えば、可愛い。
幼い顔立ちとは反対に、しかもグラビアアイドルをやっていても不思議じゃないくらいにスタイルもいい。

そんなルフィを、エースは異常なまでに溺愛していた。
幼い頃、仕事続きの両親は家に帰る事が少なくて、兄妹は広い家の中で身を寄せ合い、二人で過ごした。
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