「LETTER」

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【ジャンル】現代パロ
【傾向】全体的シリアス 
【R度】15

【Letter】

第一話「ポートガス・D・エース」



ポートガス・D・エースに親はいなかった。
父は母が身籠っていたときに亡くなり、その母も出産時に亡くなった。
これだけでも不幸だというのに、残された遺児であるエースを受け入れる親戚は誰一人として現れなかった。
このままでは孤児院行きと病院側が決断しかけたとき、一人の男が現れた。
モンキー・D・ガープと名乗った男はエースの亡き父と友人関係であり、ガープは友人の形見を引き取った。

そのままエースはガープに育てられると思いきや、彼は多忙で育てる暇もなくダダンという女性にエースを預けた。
彼女は大層驚いて、最初は断ったがガープに大きな弱みを握られており渋々エースを引き取ることとなった。

そして十年が経ち、エースは成長した。

色は漆黒で真ん中を分けた前髪。頬にはソバカスが浮いている。
目の色も髪と同じで形は切れ長。年相応の十歳の少年だが、彼が持つ雰囲気は
とても子供が持つに相応しくない、ありえない重さを漂わせていた。

育った環境が特殊過ぎたのだ。
ガープが預けたダダンの家は山を根城として働く極道一家。
組長のダダンは過去犯した罪は数知れず。従っている部下達もまた悪行を染めていた者ばかり。今では犯罪に身を引いて、山で静かに身を潜めている。

そんな周囲の中で育ったエースが優柔な人間に育つはずもなく、人斬り小僧のように育ってしまったのである。


朝の五時にエースは目覚める。
目覚まし時計はなく、早寝早起きが習慣的になっており欠伸を漏らして布団から起き上がった。
八畳の部屋には布団一式と勉強机、箪笥といった簡素で飾り気のない室内でゲームや娯楽といったものは一つもなく、ただの木刀一本のみ。
エースは夜着を脱ぐと箪笥にしまってある朱色のノースリーブと黒い短パンに着替えて部屋を出て行く。
長い廊下へ進んで洗面台で顔を洗い、また部屋に戻って木刀を持ち玄関の靴に履き替えて早朝一番に外へ向かう。その間、エースは仏頂面だ。

エースが住む極道家は和製の古い屋敷。育て親のダダンが数十年前に購入したもので四十人程の部下が住むには十分な広さを持つ。そして山を含んだ広大な庭は幼い頃からのエースの遊び場だった。

立派な木々の中へ進み歩く。
エースの日課は主に山の散策。食事は屋敷で摂るがそれ以外はずっと外で過ごしている。
この山には猛獣が住み着いており、外界の人間が決して近づかない死の森と呼ばれている。エースはその猛獣を相手に、一人で倒していた。
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