「LETTER」

□3
1ページ/7ページ




第三話「モンキー・D・ルフィ」



麦藁帽子をかぶった、細身の子供。
黒色のまるい瞳で、右目の下は傷痕。肌は健康的で白く、赤い上着とデニム生地のズボンを穿いている。

「ルフィ、エースじゃ。お前の三つ上、仲良くせい。エースよ、前に話したことあるだろ。わしの孫じゃ」

ガープは孫の腕を離し、小さな背中を押す。ルフィはふらつきながらも前進し、潤んだ顔がエースの前に止まる。初対面相手に、エースは唾を吐く。びちゃり、と唾はルフィの頬に命中した。

「うげ!唾つけられた〜っ汚ねぇっ」

ルフィは粘着物に悲鳴をあげる。だが、ガープは笑った。

「わはははっ!相変わらずの悪ガキじゃな。ダダン、後は任せたぞ」

ダダンは慌ててガープを呼び止める。
普段組長として組員を纏めている彼女であるが、警察のお偉いさんであるガープには大量の弱みを握られており、態度は控えめ。敬語も交じっている。

「ちょっと待ってくださいよ、ガープさん!エースはどうなるのさ。もう十歳だよ?一体いつ引き取るんだい。どうせあんたの孫も普通じゃないんだろ?」

「安心せい。気が向いたら迎えに来る」

「やだやだ!じぃちゃん、行かないでくれ!おれを置いて行くなよっ!!ヤクザ恐ぇよ!じぃちゃ〜〜んっ!!」

ガープは去っていき、ルフィは泣き喚く。
うるさい声に、エースは苛立つ。見るからに弱そうな子供。しかも、あのガープの孫だ。
生理的に気に入らない。エースは睨み飛ばすと、ルフィと目が合う。
ルフィは鼻水をずずっと吸い、目を大きく開いた。祖父に置いて行かれた悲しみではなく、期待に満ちた瞳。

まるで、救いの手を差し伸べる人を見つけたように。




「おれ、ヤクザ嫌いだ」

新たな住人、モンキー・D・ルフィ。
小さな子供が食堂で組員達の前で発した言葉は、思いもよらぬ爆弾発言であった。

「やかましい!あたしも何でお前を引き取らなきゃならないんだ!あたしも子供は嫌いだよ!」

ダダンに言い返されても、ルフィは動じない。腕を組み、堂々としている。決して組員達に怯えたりもせず、対立している。

エースが部屋を出ようとすると、ルフィは追いかける。
廊下を進み、玄関で靴を履き替えて、庭に出てもついてきた。

「おれ、ルフィ。よろしくな、エース。唾つけられたこと、怒ってねぇよ。仲良くしよ」

エースは無視をする。
このガキとは関わらない方がいいと思ったのだ。ガープの孫なら、尚更。今日もサボと過ごすのが彼の日課。
邪魔するのなら容赦はしない。エースの切れ長の目が鋭くなった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ