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□夏雲ストリーム
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温厚に笑う少年に、同情した訳じゃない。

土手を降りる気になったのは、ただこの子もれんと同じなんだっていう、それだけだった。



「俺、日尭でいいから」



「蓮、11歳。ひたかは」



「……同い年、かな?」



「?」



はじめの頃は、ただの暇つぶし程度だった。
やっとできた話し相手の元へ、毎日通いつめるごとに、自分と同じ匂いを感じるようになってきたのだった。


――そして、今日で5日目。



「……俺さあ」



「うん」



小川に向かって小石を投げながら、ひたかは少し押し黙る。



「……何?」



小石が軽快な水音を鳴らしては沈んでいく。それが3回繰り返されて、止まった。



「――探しものをしてるんだ」



「探しもの?」



うん、と頷くひたかを振り返ると彼は小石が落とされて生じた波紋を空虚な瞳で見つめていた。

いつもの彼とは違う瞳に、何故か隣に居るのにも関わらずその存在が遠く感じ、寒気さえ覚える。


初めて会った時の彼と、よく似ていた。



「れ、れんも一緒に探す」



「――いや、」



かぶりを1つ振ってこちらを向いた彼は、やはり虚ろな眼をしていて。

確かにここに居るのに、存在が感じられない。



――日尭に、触れたい。



ひどく不安に駆られた蓮は、先程自分に差し伸べられた手をとっておけばよかったのにと後悔した。



「俺が探しているのは、記憶なんだ」



「――え?」



「俺、れんに、言わなきゃいけないことが――」



「ひたか……?」



――ばしゃん。

魚が跳ねて、水が音を起てた。
びくりと体を震わせると、ひたかは、紡ぎかけていた言葉を飲み込みごめんと呟く。



「……また今度、話すよ」



「……うん」







夕方が過ぎ、家へ戻ったれんは、畳の上に大の字に寝転んでいた。



「れん、あんた最近よく外で遊んでるみたいだけど、友達でもできたのかい?」



「おばあちゃん……うん、えっと、小川の近くにいつも居る、ひたかって男の子」



むくりと起き上がって答えると、祖母は不思議そうにれんを見つめた。



「ひたか?そんな子、近所に居たかい?」



「え……知らないの?」



「それに小川の近くだなんて。あの辺りは、ここいらの子はみんな気味悪がって近づきゃしないよ」



祖母が言うことには、小川には1つの小さな祠があって、そこには不毛にも亡くなった人達が祀られているのだという。


――じゃあ、なんでひたかは……





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