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□妖狐 ENDLESS BLOOD
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「エンー!早く行くぞ」
「あ、はいっ」
円夏は眺めていた。
昨日まで自分の家だった建物を。
「何してたんだよ、考え事か?」
「うん……」
心はバスケ部に所属している。
今日は地元の小さな大会が行われる日で、心たち咲丘高校バスケ部の試合があり、円夏はそのバスケ部のマネージャーを任されていた。
試合の会場が割と近所なため、2人は徒歩で向かっている。
「――あのねしんくん」
「なに?」
「これ、秘密ね?」
円夏は声をひそめ、心の耳元へ顔を寄せる。
一呼吸置いてから、ゆっくり歩いたまま神妙に言った。
「……あたし、事件があった日の夜、倒れているお父さんとお母さんの前で不思議な人に会ったの」
「うん―― ん!?それって犯人じゃ、」
「ううん、なんか……なんかね、違う感じで……あたしにもよくわからないんだけど。同い年くらいのキレイな子で、あたしに向かって言ったの」
「……なんて?」
――笹月円夏。お前はまだ殺さない。妖狐としての力を目覚めさせろ。でなければ……
「"奴等に殺られる前に、私がお前を殺す"」
心は一瞬足を止めたが、またすぐに歩きはじめた。
「なんだよそれ……意味わかんねえよ」
「実は昨日も会ったの、その人に」
「あっぶねえなそれっ。お前、もしかしたらそいつに殺されてたかもしれねーってことだろ!?」
円夏は首を横に振った。
「ウチに住むんだって」
今度こそ本当に足を止めた心を、前を歩いていた円夏が振り返る。
「はっ?何、じゃあ今エンの家にはその犯人がいるってことかよ!」
「ちょ、しんくん、だからまだ犯人って決まったわけじゃ……!」
「バカ言うな 警察に連れてきゃ 一発だ 110番しろ110番」
「そうじゃなくって!あのね、しんくんは知らないかもしれないけど、あの事件は何か目的があったんだよ 人を殺さなければならない程の。あたしだって……親がいなくなったんだもん。まだショックだし許せないし、あの子が犯人かもしれないって思う……けど」
円夏は1つ深呼吸をして、再び続ける。
「あの子は教えてくれるって言ってた……親の死因と目的と、あたしだけ生かされている理由。それから……"妖狐"ってやつについてを話してくれるって」
心は溜め息を吐くと、ゆっくり円夏まで歩み寄った。
そのまま円夏の横を通り過ぎ、彼女が後ろからついてきているのを確かめると、再度質問を重ねる。
「――"妖狐"って、何?」
「あたしもよくわからない。 ただ、あたしに関係している……んだと思う。目覚めさせろって言ってたし」
「ってことはなんだ? 何か特別なものってことか、お前の中で眠ってるとでもいうのかよ阿呆らしい」
「――その通りだ、なかなか勘が良いなお2人さん」
丁度、角を曲がろうとした時だ。
その男は壁に寄り掛かって、まるで2人を待ち伏せているようだった。男の横には原付自転車があって、ハンドルにヘルメットが被せてある。
「だがな、そんなデケェ声で妖狐だなんだ言ってっと闇研究員の奴等に眼ェ付けられるぜ。いつどこで見張ってやがるかわかりゃしねえ」
「なっだっ……誰だよお前。人の話勝手に聞いてんじゃ――」
「待ってしんくん。あ、貴方は知ってるの?妖狐が何なのか――」
男は壁から背を離し、2人と向き合うと不敵に笑った。
「ああ。知ってるも何も、この俺自身が妖狐だ。女、名前は」
「ま、円夏です、笹月円夏……ってあの……え?貴方、妖狐……なんですか?」
「妖狐の意味すら知らねえのか?」
男は頷いた円夏と同じ視線の位置まで屈んだ。
「円夏も俺等の仲間だ。お前も妖狐なんだぜ」
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