Girls

□誘惑する蛇(綱雲♀*甘)
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君が与えるのなら、
毒でも蜜でも飲干してみせるよ。








「…また 群れてる」

渡り廊下から見下ろす中庭の一角、
取り巻き達と笑い合う君の姿を硝子越しになぞる。

「どうして連中の前でまで笑う必要があるのさ…、ムカつく」

握り締めた掌に爪が食込む。
ひとの気も知らず彼等と戯れ合う恋人の姿に、本気で怒りが沸く。
殺意すら抱いた。


君 は僕だけ のものなのに。
簡単に触らせないでよ。


肌も髪も何一つとして、
自分以外には自由にさせない。
好きにさせたくない。

僕だけが触れて、僕だけが感じたい。

なのに君は平気で僕以外に触れて触らせて、笑い掛ける。


自分を愛撫した指先で、
自分の名を甘く囁いたその唇で、


僕以外に君を与えたりなどしないで!

そんなの、全部 咬み殺したくなる。


僕には君以外 いらないのに、
君はそうじゃ ないの?


君には僕だけがいればいい、
他の人間なんかいらないのに。

「!」

遠目にもそうとわかる特徴的なシルエットが君に近付く。
迎える君は変わらず笑顔で、
自分の隣に強引に割り込む相手に拒む様子も無い。

そんな君の腕に馴々しく擦り寄る、女の 躰。

胸の膨らみを押し付ける様にして腕に抱き付くその姿に、
目も眩む様な激しい怒りと嫉妬で全身が沸立つ。
視界が真紅に染まる。

「……咬み殺すっ!」

外界とを隔てる窓を勢い良く開け放ち、窓枠を掴む。
足を掛け、躊躇無く三階下の地上へと飛降りた。

一瞬の浮遊感の後、耳の横を風切りの音が過ぎ、着地する。
立上がった瞬間、衝撃に僅かふらめくのに唇を噛んだ ら、



「――いらっしゃい。早かったですね、雲雀さん」



彼の 甘い 声がした。

顔を上げれば、
目を丸くした取り巻き達と違い、まるで予想していたかの様に落ち着いた態度で柔く 微笑み掛ける、君。


その 腕に、


「…ッ!離れろッ!」

寄り添う女の姿を認めて、一気に血が上った。
脚のベルトから瞬時にトンファーを引き抜き、距離を詰め、
女の頭頂部目掛け武器を振り下ろす。


「…クフフ、相変わらず血の気の多い女(ヒト)」


女の頭蓋を割る筈の武器は鈍色に遮られ、届かなかった。
三叉槍を楯に薄気味悪く微笑する相手を睨(ね)め付け、力押しで薙払う。
押し切られた相手はくるり、空中で一回転し脚を揃え、軽やかに草地へと着地してみせる。

「馬鹿力も健在…、ですか。クフフ、その様に取り乱してみせるのは見苦しいですよ。雲雀恭弥」
「五月蠅い!僕の男に近付くなッ!」

再度、向かい掛けた躰が引き留められる。
絡み付いた腕の感触から 誰か を知るなり、
馴染ませられた躰に瞬時に火が点く。

片手は胸に、
もう片方の手は自分の顎を掴み、君の方へと。

楽しげに笑む君に見惚れた隙を突かれ、唇を奪われ、
思うが侭の蹂躙を受け、貪られる。

君に触れられた瞬間、全身が性感帯となる様調教された躰は既にがくがくで、
震えながらずるずるとその場に膝を突けば抱き込まれて、
更に深く深く口付けられる。

観衆を前にした行為に戸惑いが無かった訳では無いけれど、
君を独占したい気持ちの方が何倍も勝って、人前である事も忘れて自分からも腕を回し、口付けた。

「んっ、ふぅ…っ、はふっ、ンぁ…っ!」

胸への愛撫は止まらぬ侭、
背をしならせ、君の腕の中で喘ぐ自分の首筋に舌が這い、ぶるりと背筋が泡立つ。

つい先程まで胸を占めていた苛立ちも怒りも跡形も無く消し飛んで、
とろとろと君の熱に溶かされていく。
堪らなく 心地良い。

「…可愛い、雲雀さん」

満足げな君の表情に、既に君の策略であった事は気付いていた。
けれどその事実さえ君が僕を想う証明の様で 嬉しくて、
どうしようも無く愛おしくなる。

「…酷い 当て馬ですね、」

不満そうに呟く骸の声も耳に入らない。
君の目配せに気まずげに退場していった連中の事も、もう頭には無かった。


ただ 今は、



「つな…よしっ、もっと…ッ!」



それが毒でも蜜でも構わない、
君が与えてくれるもので、溢れるくらい 僕の中をいっぱいにして?


君以外誰も入れない様に。
君の誘惑や策謀になら、喜んで嵌まってあげるから。


end.

(君が望むなら、楽園も捨てられる)
 

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