† Novel †

□9月2日の最終日
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「新一ぃ?」

「んー?」

オマエ宿題やってないだろ?
ソファで寒いだのやっぱ暑いだの、
うだうだ言ってるけどさ

「明日、始業式でしょ」

なんと今年は3日からが学校だ。
何人もの学生が土日に感謝しているだろうか。

つまりラストスパート、最後の情け。
小学生も高校生もなんて学習脳力がないんだろ、
なんて自分を棚に上げていってみるけど

「新一ぃ、そろそろやらないと進級、危ないんじゃないの?」

ねぇ、コナンくん

なんて呼んでみたらギロリって、
そんなに嫌かなぁコナンくん?

「しょうがないんだからさ、宿題、やろ?」

高校生の宿題なんて小学生のアサガオの観察に比べりゃ簡単だろ?
微分積分だって、町中駆けずり回ってやる自由研究より楽だろ?

なんで大人になるとこうも不良になっちゃうんだろね


「哀ちゃんだってもう終らせたんだよ?」

「・・・・・・・・・・・・」
「黙秘?」
「・・・・・・・・・嫌だ」
「は?」
「んな面倒なの嫌だ」

なんで大人になりきれない18歳はこうも不良になってしまうんだろうね

溜息が出た




「ねぇ新一、それはしょうがないよ」

だって学生だもん、ね



明日っから俺は家に帰って
新一はまた一人になって、

いってきますも、
ただいまも言う相手いなくなって。

夏休み前と同じ生活に戻って、
でも俺等は変わっていくから、



「ねぇ、そんなにやりたくないんならさ」

宿題なんかよりもさ、

「俺とヤらない?」

大人になろうよ、不良な18歳。




「なぁ快斗ぉー」
今日始めて名前を呼ばれて、
「おめぇ調子にのんなよ?」
黄金の右足が鳩尾を狙って、
「死ねばいいのに」
って、

軽く交わして謝って、へらりって笑って。
だって知ってるから、
新一が不良だって。
口が悪いのだって不良だからなんだよね。


「じゃぁ大人しく宿題やればいいじゃん」
「面倒だくそぉー」
「知ってるよー」
「じゃぁおめぇやれよ」
「いいよ」

きょとんって、可愛い顔して


「誰がてめぇなんかに頼むかよバーロ」

心底嫌そうに言うから、
あぁ、可愛いな新一は、って思う。
まだ子供でいろよ、大人になりきれない不良な18歳

そしたら俺は新一の傍で子供のままでいるからさ、







「なぁ、帰らねぇの?」

宿題をやりながら、時計を見て言う。
「朝早く出れば平気だから」
「・・・・・・そ」

それっきり、また宿題に向き直る。
やっぱり微分積分なんて新一には簡単なんだろう
すらすらと書き込んでゆく。
ならさっさとやっとけばいいのに、


「ひまぁ」


「・・・・・・」


「しぃー」


「・・・・・・」



明日もこれるのかなぁ
携帯の日付見ながら思った。

小学生は母親に泣きつき
高校生は圧迫感から不良に
そして自身を誇示する。

じゃぁさ、
さっきまで小学生で、高校生な彼は
誰に泣きつき
誰に誇示する?

結局まだまだガキじゃねぇか俺等
やりたいこととかヤりたいこととか沢山あって、
出来ないことや強要されることに一々ムカついて、
八つ当たりして、


だから俺は新一の傍にいて、
会話したいなぁって、我侭言うよ。


学生なんだからさ、
宿題にヒーヒー言って、苛付いて
八つ当たりに俺に構ってよ、

大人になりきれない不良な18歳を
俺にぶつけてみせてよ、

そしたら俺だって、
帰りたくなくなるんだからさぁー
不貞腐れた、自分の思考に



「快斗ぉ」
「ぁにぃー」
「アリガトー」


「・・・・・・カタコトですか」
「喜んだくせにー」

あぁ、喜んださ
新一が俺を見てくれること意外に何に喜べるんだ。
だってカタコトなのは照れ隠し、
それに突っ込むのも照れ隠し。

ったく素直じゃねぇの。






18歳の俺等は。

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