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□大人の雑誌
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「それは?」
「貰った」
「……誰から」
「ロックオン」
「返してこい。もしくは捨てろ」

今刹那が持っているのは所謂アダルト雑誌。
彼が読むには後4年必要なもの。

こんなものを渡すなんて一体なにを考えているんだあの人は。
そしてそれをなんで受け取るんだこいつは。
目の前でピンク色のページをめくる子供に思わず溜息がでる、

「って読むんじゃない!」
ばさりと雑誌を取り上げれば驚いたように目を張る刹那がいる。
驚きたいのはこっちだ。
「こうゆうのは大人になってからにしろ。年齢制限もちゃんとここに書いてあるだろう」
わざわざ20禁と書かれた赤いマークを指差して言う。
こいつに一般知識が備わっていないのは分りきったことだ。
知らない事も多く、色々教えなければいけないこともある。
年上だからとかそんなことではない。それに艦内でこんなものを読まれるのは余りにも不愉快だ。
じっとマークを見つめている刹那は首を傾げた。

「…アレルヤも読んでいた」

思わず握った雑誌は何枚か破れただろう。

「…ハレルヤは買っていた」

思わず破り裂いた雑誌は無残な姿になっただろう。
ぱさりと軽い音を立てそれは床に落ちて、その生涯を終えたかに見えた。

「あ…」

刹那は雑誌を追ってしゃがみこみたまたま開いていた見開きのページを熱心に見る。
「おい、読むなといっている」
腕を掴むがいつものような拒絶はなく代わりに予想も出来ない言葉が返ってきた。

「この女、ティエリアに似ている」

刹那が俺の顔を確認するように眺めまた見開きに視線を落す。
それはカーディガンとブーツだけを身に付けた女性が淫らな行為をしながら微笑んでいる写真だった。
女は確かに眼鏡で、髪色も顔立ちも似ている、違うとしたらその髪に薄いレイヤーが入っていることだ。
しかし、なんだ。だからなんだと言うんだ。
この目の前で見入っている子供は何も言わない。
読むのを止めろと3度目の声を上げようとした時だった。
刹那が動いたのは。

立ち上がった勢いのまま胸倉を掴まれ、あと5cmの距離に顔がある。
驚きで対応が遅れた。その一瞬が最悪な事態を引き起こす。


「でも、ティエリアは綺麗だ」



そう告げて子供は何事もなかったかのように通りすぎて行った。

言いたいことはいっぱいあった。
そんなものは貰うな。読むなと言っているのに何で読むんだ。
と言うかなんでアレルヤやハレルヤのことを知っているんだ。
それに、なんで俺とそんな女を比べるんだ、とか。

混乱なんてことはない、ただ言う相手がここにいないだけだ。
だから何故、俺が。

「…不愉快だ」

こうも苛々とするのは全てあいつのせいだ。
そうに決っている。

裂けたアダルト雑誌をそのままにしておくことも出来ずしょうがなく拾う。
自分に似た女は媚びるような視線を送り続ける、その笑みが増したように見えたのは何故だろうか。

その笑顔を破り裂いた結果ゴミが増えたが、責任を彼女に押し付けるようにそれをゴミ箱に押し込んだ。








後日ロックオン、アレルヤとハレルヤが怒られたことには理不尽な理由がプラスされていたがそれを当人達は知るよしもなかった。


 

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