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□例え話
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例えば目の前に今にも泣き出しそうな子供がいたとする。
アレルヤは勿論慌ててあやすだろし、ロックオンだって困った顔をしてしゃがみ込むだろう。
刹那とティエリアは心底嫌な顔をして、それでも泣かないよう気を使うだろう。泣かれたらなおさら困るから。

例えば目の前に迷子で彷徨う子供がいたとする。
アレルヤは勿論手を繋いで親を探すだろうし、ロックオンだって呆れた顔をして交番へ連れて行くだろう。
刹那とティエリアは知らない顔をして、それでもアレルヤやロックオンに言うだろう。報告のように。

例えば目の前にたった独りで脅える子供がいたとする。
アレルヤは勿論優しく言葉をかけるだろうし、ロックオンだって大人のような顔をして手を差し伸べるだろう。
刹那とティエリアはしかめっ面でなにも言わず、それでも傍にい続けるだろう。


じゃあ、

例えば目の前で泣き出しそうな子供が金色の瞳をもって、
例えば目の前で迷子で彷徨う子供が狂気をもって、
例えば目の前で独りで脅える子供が銃をもっていたら。

なぁ、お前らはどうするんだ?

アレルヤを暴力で守ることしか出来ない俺はどうすればいい。
小さくても、幸せで満ちたアレルヤを守れない俺はどうしたらいい。
なにさ、お前らが少しでもアレルヤを苦しめるのなら俺はいいぜ、殺すまでだ。
だけど優しさにほだされた此処で俺は存在意義をなくすんだ。


『なぁアレルヤ、俺が死んだら墓を作ってくれるか?』

「なに、嫌なこと言わないでよ」

『答えろって。俺がいなくなったらアレルヤ、お前はどうする』

「そうだね、泣いて泣いて泣き叫んで、探しにいくね」

『・・・・・・』

「君を探すためだったなんでもするよ。ハレルヤ、急にどうしたの?」

『何でもねぇよ。やっぱお前は馬鹿だな』

「そんなことないよ、ハレルヤの方が頭悪いもの」

『何いってんだ、俺の何処が!』

「だって、皆はハレルヤが思ってるほど白状じゃないよ?」

ほら、と言って食堂の扉を開ける。

「お、待ってたぞー、座れ座れ」
「遅い。何をしている」
「・・・冷める」

テーブルに並んだ食事は暖かく美味しそうな香がする。

「遅れてすみません。それで例えばの話なんですけど」

例えば目の前で泣き出しそうな子供が金色の瞳をもって、
例えば目の前で迷子で彷徨う子供が狂気をもって、
例えば目の前で独りで脅える子供が銃をもっていたら。

どうします?


そうだな、と一瞬考えたのはティエリア。
「まずは銃を奪う、錯乱して発砲される可能性があるからな」

主語が抜けた短すぎる台詞を表情を変えず、当たり前のように言ったのは刹那。
「連れてくる」

最後に閉めのように指を立てて笑ったロックオン。
「で、俺が優しく抱きしめてやんのよ。お兄さんだからな」

刹那が睨むがそれすら面白いのだろう。
笑っているロックオンにティエリアが呆れた顔をする。

「それで?アレルヤ、おまえは?」
ビッと指をさされる。

「え、僕ですか?」

「当たり前だろ、自分で振っといて逃げるなよ?」

「そうですね、僕は一緒にいます。ずっと一緒に」


ほらねハレルヤ、みんなは君を見捨てたりしないよ。
だって君は僕なんだもの。

『・・・だから馬鹿なんだよ、アレルヤは』



温かい食事にはあまり会話はない。喋っているのはロックオン一人で、相槌をたまに打つ。
そんなテーブルにハレルヤが溜息を吐いた。


 

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